「男の甲斐性」で家計を支えるのは無理すぎる 「夫婦4.0」で男性も女性も"自由"になれる

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大嶋:働き方改革は、絶対に必要です。70歳、75歳まで働くようになれば、キャリアの途中で育児だけでなく、介護、自分や家族の病気、学び直しの必要に遭遇する可能性が高まります。そのときそのときに必要な役割を担える働き方を求める人は、男女問わずもっと増えていくでしょう。

ただ、リクルートワークス研究所の同僚である孫亜文さんの研究ですが、男性は労働時間が短くなっても家事時間はそう簡単に増えないというものがあります。つまり家庭内のジェンダー平等を進めようとしたとき、働き方改革は必要条件だけれど、十分条件ではないんですね。

結局家庭での役割が女性に偏る構造が変わらないと、職場でも責任のある仕事を任せるかどうかで差が出てきてしまったり、女性が再就職をする際に過去の経験を生かせなかったりして、女性の賃金がきちんと上がっていかない状況は変えにくいですよね。

男性育休問題は、男性の問題にしないほうがいい

中野:そうするとやはり働き方改革だけではなく家庭内の家事分担が重要ということですが、やはり男性が家事育児を担うと風当たりがきつい、というのもまた企業の職場の空気ではありますよね。つい最近も男性が育休を取った後に転勤があって辞めることにしたというケースが話題になりました。男性育休については大嶋さんはずっと発信されていますが、最近の動きや義務化の話題についてはどうお考えですか。

大嶋男性育休は男性の問題にしないほうがいいと思っています。「男性(個人)が取りたいなら取らせてあげよう」では、男性育休に関わる問題やそれによって実現するはずのことが矮小化されてしまう。

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この問題は、背景に、社会に必要なことがすべて横たわっているんです。男性が育休をとるということで、男性が育児をすることが当たり前になる。そうすると女性も外でも働く、家計収入があがる、上昇婚にこだわらなくてもよくなる、子どもを持ちやすくなるといった循環がうまれます。

少子化に関わる問題であり、企業にとっても若手の人手が足りなくなる中で人を確保すること、家計にとっても不安定化している収入を安定させ、病気やケガなども含めた荒波を乗り越えていく手段にもつながっていくはずです。

義務化については、企業によっても状況は異なるので、女性活躍推進法で企業が数値目標を設定し状況を開示したように、男性の次世代育成にまつわる指標も現状と目標、結果を開示するのがいいと思っています。

(後編に続く)

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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