大嶋:女性はここ、男性はここ、と当てはめる場所が決まっているパズルのような夫婦の役割分担が、より立体的で、かつ自由度が高いものになっていく。それで「レゴ」を思い浮かべました。パズルはどこにどれを置くのか予め決まっていて自分で選ばなくてもいい、考えなくてもいいという側面があった分自由度は低かった。これからは色とりどりの役割をそのときそのときの必要に応じて、夫婦で自由に組み合わせていくことができるといいと思います。
中野:夫婦4.0を実現するためには何が変わる必要がありますか?
大嶋:いきなり4.0のレゴ型にというのは難しいので、まずは3.0(夫も妻も仕事と家族のケアを担う)に進んでみるというのが夫婦の選択肢として有力だと思います。例えば、妻が1つ先の仕事にチャレンジできるよう、夫が週に1~2日は早く帰宅し、子どもの世話をする日を作ってみるとか。
妻が本格的に働いてみると、何が起こるかと言うと、男性が自由になるんです。引退を早めてもいいかなとか、起業しようか、転職をしようかと、考えられるようになる。それを実感してもらいたいです。私の分析でも、妻が安定した雇用に就くと、夫が転職の希望を持ちやすくなるという結果が出ています。
中野:私の本の中でも、男性の無限定な働き方があるゆえに妻が家事やケアを一手に引き受けないといけなくて、保育や教育もそれを前提にしているということを指摘していますが、逆に妻が働いていないことで、男性が長時間労働や転勤アリの硬直的な働き方から逃れる契機を失っているように見えるケースが見受けられました。男性も逃れられないループに陥っている。
日本は教育費や失業扶助が手薄
大嶋:夫婦で、これから社会がどうなっていくんだろうと一緒に想像したり、100年人生と呼ばれる中で自分らしいライフコースをどう設計していきたいのかをすり合わせることも大事だと思います。子どもに手がかかるのは長い人生の中では意外に一時期なんですよね。その長い人生でどこのタイミングではどういう役割をお互い果たしていくのか、話し合う。
中野:社会が変わるべきと思われる点はありますか?
大嶋:中野さんの著書とも重複しますが、やはり高度経済成長期に形成された前提をもとにした社会保障のままなんですよね。男性は大多数が正社員として企業に雇用されること、そしてその男性の賃金で家族の生活を丸ごと支えられる前提で社会保障が組まれている。
教育費に対する公的サポートは少ないですし、失業したときのセーフティーネットも、欧州では一般に雇用保険からの給付以外に、税財源によって生活困窮を回避する失業扶助があるのに対し、日本は雇用保険から給付されるのみで期間が短いです。雇用されていない人と雇用されている人の社会保障も均等ではないので、やはり柔軟にキャリアをつくりやすいとは言えない仕組みです。
中野:労働市場の流動性が低いとよく言われますが、転職市場の問題というよりは、こうした社会的整備によってリスクを負いにくいから転職・転身のチャレンジがしにくいということですよね。教育や保育にかける公的支出はOECD諸国で最下位クラスです。
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