「男の甲斐性」で家計を支えるのは無理すぎる 「夫婦4.0」で男性も女性も"自由"になれる

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大嶋:企業経由で教育費も賄うモデルでしたからね。でもその前提は大きく揺らいでいます。実は1997年から2017年にかけて、勤労者がいる2人以上の世帯では、世帯主の勤め先からの賃金は、月あたり平均で約7万円減っています。これに対して、世帯主の配偶者の女性の月あたり賃金は平均で月8000円しか増えていない。

この間、国は児童手当の大幅な拡充や教育費の軽減などの手を打っていますが、男性の賃金減少に対して女性の賃金上昇力が弱すぎて、国の子育て支援の拡充が焼け石に水になっています。なので、やはりチャレンジする人にやさしい、再就職などがしやすい環境整備と、税金や社会保険の枠組みを女性の賃金上昇につながるように改変していく必要はあると思います。

既婚女性の6割は非正規雇用者

中野:共働き世帯がとっくに専業主婦世帯を追い越している、とは言っても、雇用されている既婚女性のうち、6割に当たる845万人が非正規雇用者で、正規雇用者は4割弱。正社員の場合でも総合職に比べて昇進や昇給が限られる一般職が多く、数少ない総合職もハラスメントを受けたり無意識の偏見などで管理職になかなかなっていかない。女性の賃金が上がらない理由は何重にもなっています。

大嶋:正規・非正規の賃金格差については、有期雇用からの無期転換に関わるルールが定められたり、同じ企業での同一労働同一賃金が進められたりはしていますね。そのうえで、有期雇用から無期雇用に転換した後に、きちんと組織の中でルートを上っていけるようなキャリアパスや処遇が必要だと思います。

そして正規・非正規格差以上に男女の格差を見ると、ここにはやはり家庭内の役割のジェンダー差が解決されないとどうしても働く時間に差ができてしまうので、解決されません。

中野:それこそ“専業主婦前提社会”が成り立っていたときは、あくまでも正社員の夫が家計を支えているから、非正規はその妻や学生が家計補助やおこづかい稼ぎ程度の目的で働いているものとされていた。ですが今は非正規共働きや、独身で非正規で生計を立てる人たちも増えているわけですよね。

「夫婦4.0」を提唱していくと、結婚していない世帯が対象から抜け落ちてしまう側面があると思いますが、そういった多様なあり方への配慮はどうあるべきでしょうか。

大嶋:今の社会保障の仕組みは、いわゆる標準的な家族とは異なる形態のシングル家庭などへの支援も手薄です。海外には実質的な夫婦やひとり親への支援、養育費の支払いが確実に行われるための仕組みを作っている国もあります。

また、先ほど妻が安定的に働くことで、夫は自由にキャリアを描きやすくなるという話をしましたが、お互いにサポートし合える関係を持たない人が、どうしたら柔軟に次のキャリアを描けるようになるのかも考える必要があります。そして、レゴ型の夫婦の役割を進めると同時に、配偶者を持たない人へのサポートも必要だと思います。

中野:男女ともに共働きであれ独身であれ、柔軟な働き方ができる社会に向けて、企業側がすべきことはありますか?

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