大英博物館で異例ずくめのマンガ展開催の意味 国外開催のマンガの展覧会として最大規模

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今回、「大英博物館にてマンガ文化の特別展が開催されたこと」で得られる国内での評価は、プラスの面が大きい。海外においても議論の提起を含めて一定の評価が得られたといっていい。このように肯定的な面がある一方で、8月末に同展が終了してしまうという事実もある。

世界有数の規模の博物館において、マンガ文化に関する大規模展示が次にいつ、行われるかはわからない。これは、残念なことである。もし日本に今回の特別展に比する展示が可能な、マンガ文化を扱う常設の博物館があれば、展示物の貸し出しなどを通じてより強く海外に向けて発信ができるのではないか。

大きな価値を生んだ

とはいえ、同展の開催は、大きな価値を生んだと考えられる。第1に国内での協力体制である。今回、多くの漫画家・出版社・プロダクションなどが協力し、かつ、さまざまな出版社・漫画家が関わる作品・展示物がテーマごとに展示された。社ごとのブースがあり、そこに各社が展示している展示会とは大きく異なる。

最後の展示ゾーンのテーマ(筆者撮影)

これは海外であり、かつ大英博物館という制度としての装置が各社に合意をもたらすことに大きく貢献したことは想像にかたくない。将来的に、日本国内においてもこのような展示ができる可能性を見いだすことができたといってもいい。

第2に、日本国内においてもマンガ文化を博物館で扱うことの議論が一般社会にも広がったことである。大英博物館で大規模な特別展が開催されたという、いわば外部の評価に満足するのではなく、マンガ文化のホームタウンとして、わが国においてそれを越える常設・特別展をすることを目指してもよいのではないか。同展をきっかけとした議論が望まれる。

中村 仁 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授

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なかむら じん / Jin Nakamura

宇都宮大学卒業、京都大学大学院法学研究科修了。東京工業大学より論文による博士(学術)を取得。東京大学大学院情報学環特任講師などを経て、2019年から現職。東京大学大学院学際情報学府客員准教授などを兼務。専門は観光メディア論、社会情報学。著書に『クリエイティブ産業論 ファッション・コンテンツ産業の日本型モデル』(慈学社)などがある。

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