中国より後れている日本の再生エネルギー政策

「名ばかり環境先進企業」が多すぎないか?

そのためにも、企業はまずエネルギーに関して、全体量を把握すべきだ。これは比較的簡単にできるはずだ。使っている電気、ガソリンのエネルギー、水道のポンプなどで使っているエネルギーを積算すればいい。そしてここから毎年どのくらい減らすかの数字を決めるべきである。1年に2%程度からの削減でも削減率は十分だ。複利で計算するので、34年で50%になる。もし削減を急ぐのなら、年率3%でもいいのではないかと思う。

ではどうやって減らしていくのか。まずは、企業の本社や自治体の役所などの公共建築から始めてみてもいいのではないか。省エネルギーを徹底して進め、減らしたうえで、賄うエネルギーを再生可能エネルギーにしていく必要がある。ここで必要なのは「節電のための節電」などではない。もっと構造的にエネルギー量を減らす方法が必要だ。

その際、最も大きな効果を発揮するのが高断熱化だ。「たかが断熱」と思われるかもしれないが、現在の日本の建物は断熱がないに等しい。だから、この効果は絶大である。

環境先進国ドイツは再生可能エネルギーが、全体のエネルギーの40%を超えたといわれている。ではその推進力は何か。それは、新築も含め、既築建物の断熱化といわれているのだ。徹底した断熱化を行った結果、建物のエネルギー消費量が半減し、そこで初めて再生可能エネルギーを使っていったのである。

何度も指摘しているが、現在、日本の建築物の断熱化は遅れている。国土交通省はパリ協定の締結に対応して、2020年より住宅に関しても基準を義務化しようとしたが、業界の理解が得られていないとして義務化を断念した。一方で、経済産業省はパリ協定の順守に向け、現在の二酸化炭素の排出量を26%削減することを目標としている。

その際、業務(業務はビルや公共施設、商業ビル)、住宅に関しては、1990年以来二酸化炭素を増やし続けていることから、2030年の目標を「40%削減」としている。こうして書くとわかっていただけると思うが、筆者に言わせれば、どう見ても2つの省庁の活動に整合性が見られない。住宅における省エネルギー基準の義務化の見送りは、環境的な視点から見れば、一刻も早く導入すべきだったのではないかと考える。

「建物の高断熱化」を一気に進めるべき時

建物の高断熱化、それにつながる低炭素化の流れは世界の潮流である。ヨーロッパの多くの地域は2020年前後に「ゼロエネルギー」を義務化しようとしている。また、アジアでも隣国の韓国は2030年にゼロエネルギー化することを目標としている。

さらに、中国はその国土の大きさ、人口の多さから再生可能エネルギーの導入と建物の高性能化(高断熱化)に非常に熱心だ。とくに太陽光発電の生産と導入に熱心だ。太陽電池パネル、風力タービン、電気自動車の生産や輸出、導入では世界トップであり、2017年には世界の再生可能エネルギー投資の45%以上を占めた。

建物はといえば、パッシブハウスという基準がある。ちょうど日本の省エネルギー基準の住宅の、さらに5分の1程度のエネルギーしか必要としないこの建物、日本は全国の合計が2500㎡、韓国が3800㎡に比べて、すでに中国では5万㎡を超え、これを2020年までに200倍にしようとしている。彼らに言わせると、これは国策であり、重要なエネルギー政策として進めるべきだという。日本は完全に周回遅れの様相である。

このように世界はSDGs、あるいはRE100推進を歓迎し、ESG投資のような環境的投資に対しての強い追い風が吹いている。先般の建物の高断熱化は一見すると地味だが、既存の技術ですでにできることがわかっている。どんどん進めない理由はないはずだ。

そもそも、日本の参加企業の中で、本社ですら「ゼロエネルギービル」にできないのであれば、そのスタンスが疑われるのではないか。また、建設に携わっている会社が作る建物が「CO2を出さない」「ゼロエネルギービルあるいはゼロエネルギーハウス」ではないのなら、何のためにそのイニシアチブに参加しているのか。

こういった常識と照らし合わせるとすると、「低炭素化に対しての内容を何も理解していない企業だ」と逆に疑われかねないはずだ。企業も自治体も、まずは本社や役所のゼロエネルギー化をすることで、低炭素化への道に対するリアリティーが生まれ、そこからより具体的なロードマップが描けるようになるはずだ。

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