日本とアメリカ、「シンクタンク」の決定的な差 政策立案の実務経験と世界への発信力が違う

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船橋:なるほど。ポッティンジャーも含めて、トランプ政権になっても、シンクタンクの意見を聞くとか、シンクタンクへのニーズがなくなったわけではないということですね。

翻って、日本の場合を考えるとき、政策はすべて官僚が作っていますね。シンクタンクにお声はかかりません。アメリカでも官僚を使って政策を作るのでしょうが、それプラスの何をシンクタンクに求めているのでしょう。

越野:それは、回転ドアの強みだと思います。シンクタンクはもちろん政策研究の場ですけど、各プログラムのディレクターの方々は、前政権で重要ポストにいて実務を担当していた方々だったりしますから、現政権が助言を求めることがあるという印象です。現在も続く課題に、どのようにアプローチしていたのか、なぜそうしたのか、どういう理由で決断したのかといったことです。

船橋:面白い。その視点は気付きませんでした。アメリカでは官僚は政治任用されるから、政権が代わると官僚も交代する。官僚上層部のインスティテューショナル・メモリー(組織的引き継ぎ)がないということですよね。だから、前任者や経験者に意見を聞こうとすると、そういう人たちはたまたまワシントンのシンクタンクにいるということですね。そもそも政党を異にする政権交代がほとんどなく、たとえ代わっても官僚は交代しない日本とはまったく違うわけだ。

越野:そういうことは、今の政権だけではなくて、シンクタンクと政府の関係はこれまでも、そういうものだったと思います。

議会や大統領候補からのニーズ

それから、シンクタンクにはホワイトハウスだけでなく、議会からのニーズもあります。議員の方々へのブリーフィングも増えています。また、今は2020年の大統領選に向けて、候補者の方々に積極的にブリーフィングをしたり、先方から依頼を受けたりということもあります。私のいる日本部でも、日本の研究や、日米同盟の重要性や課題を立候補予定者にブリーフィングしています。そういう形でも、シンクタンクは政治に影響を与えているように思います。

船橋:政策顧問をやるような人たちは、行政だけでなく、議会にも政治任用的に入っていくこともありますね。議員立法の数が多いアメリカの議会は、監視機能だけではなく政策立案機能もあるから、政策起業家のニーズがある。ここも、日本とは違うところですね。

越野:シンクタンクはほんとうに面白いところで、私のようにジュニアのポジションにいる研究員は2~3年以上いてはいけないような場所です。次のステップはさまざまですけど、中には大統領選挙や、議会や知事選などの選挙のキャンペーンに入って、シンクタンクで身に付けた専門性を活かして、候補者の政策スタッフになる人もいます。それは、ある意味で賭けですが、候補者が勝って、例えば、外交委員会の委員長などになったら、その顧問としてのポストを得られるので、魅力的なオプションと考えられています。

船橋:若い人にとって、シンクタンクで長く働くというのは、決してエリートコースではないということですね。

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