世界トップのシンクタンクは日本と何が違うか 米CSISで働く若き日本人研究者に見える光景

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越野:それぞれのシンクタンクによって形はさまざまですが、CSISの場合、例えば、私の上司のグリーン先生は先ほども申し上げましたが、ブッシュ政権から出た後、CSISのポストとジョージタウン大学の教授も兼務されています。韓国部のヴィクター・チャ氏も同じです。大学では学術的研究を、シンクタンクでは実務の視点も交えた中長期的な戦略を描く政策研究・提言を行っています。

もう1つのパターンとしては、アメリカ企業に政策的視点からビジネスのアドバイスをするストラテジック・アドバイザリー・ファーム(戦略顧問事務所)やロビイングファームを兼任している方も多いと思います。シンクタンクの研究員の多くは、前政権で政府の中枢にいた人たちですから、政権内にいたときに培ったネットワークを活かして高度な情報を集めて、助言しています。

船橋:つまり、政権交代のたびに政府とシンクタンクや民間のコンサルティングやロビイングファームを行ったり来たりしている人が大勢いるということですね。ワシントンで有力なファームは、例えばどこですか。

越野:これにもいろいろな形があるのですが、例えば、オルブライト・ストーンブリッジ・グループや……。

船橋:ビル・クリントン政権の国務長官ですね。

越野:はい。それから、やはりクリントン政権で国防長官だったコーエングループとかですね。

船橋:ウィリアム・コーエンですね。ただ、そういうファームはシンクタンクとは違うんですね。 

越野:違います。ストラテジック・アドバイザリー・ファームはコンサルティング会社で、さまざまな情報を収集し、その分析をクライアントに提供しています。とても面白い仕組みになっていて、レポートのベースは若手のアナリストが作成しますが、上に行けば行くほどアクセスできる情報も増えていきますから、元官僚や閣僚級の人たちがどんどん色付けして、最終的なレポートができあがります。私が大学院の夏休みにインターンを行っていたアジア・グループも、ストラテジック・アドバイザリー・ファームでした。

船橋:そうすると、顧客はアメリカ企業が中心だということですね。

越野:はい。

北朝鮮のミサイル基地再稼働を発信

船橋:では、シンクタンクのほうはどうですか。シンクタンクの顧客というか、ユーザーは誰なのですか。 

越野:そうですね、公益のために研究を行う非営利団体ですので、基本的にはアメリカの政府や議会、メディアなどですが、CSISくらいの規模のシンクタンクになると、国際的にも需要があります。例えば、国連総会があったり、アメリカ大統領との首脳会談があったりして、各国の首脳がワシントンを訪れたときに、何か新しい政策を発表する場所としての機能も果たしています。これも、インターン時代に印象に残った経験の1つです。

いつ政府の閣僚がやって来ても、国外の首脳級の人が訪ねてきても、コーヒー・サービスの提供から、イベント運営(ロジスティクス)まで完璧にこなせるよう、各部門のインターンからフルタイムのスタッフまで皆訓練されていますから、200、300人ほどが入れる部屋はすぐにいっぱいにできます。

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