「役に立つ学問」が事前にはわからない根本理由 「モンゴル×超ひも理論×シロアリ」で考える
学者が考える、自身の研究の「有用性」とは
「学芸ライヴ」と名付けられたこのトークイベントは、今年で設立40周年を迎えたサントリー文化財団が企画・主催する記念事業の1つ。第1回目は「役に立つって何?──モンゴル×超ひも理論×シロアリ」と題して、文化人類学者の小長谷有紀氏(国立民族学博物館客員教授)、理論物理学者の橋本幸士氏(大阪大学大学院理学研究科教授)、昆虫生態学者の松浦健二氏(京都大学大学院農学研究科教授)の3人を招き、経済学者の大竹文雄氏(大阪大学大学院経済学研究科教授)が司会進行を務めた。
「以前から、ぜひとも話を聞きたかった」という大竹氏の要請で実現した、まったく異なる分野の研究者たちの顔合わせ。議論はまず、各自が研究内容を説明しながら、「学問の有用性」をどうとらえているか述べるところから始まった。
小長谷氏の専門はモンゴル研究。1979年、社会主義体制だった同国を訪ねて以来40年にわたり、遊牧を中心に環境や農業、歴史や民俗文化など幅広く調査研究を積み重ねてきた。
これまでに書いた論文約100本は、すべてネット上に公開しており、ダウンロード数で「社会への有用性」を測るなら、「モンゴル国営農場の歴史」「古代からのモンゴル農業開発史」「チンギス・ハン崇拝の成立過程」の3本が上位を占めるという。前の2本は「社会主義時代の国営農場の記録はモンゴルにもなく、世界中で参照されるから」、残る1本は「モンゴルと言えばチンギス・ハンという、みなさんの好みの反映」と理由を推測する。
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