日本電産永守氏が語る「今の大学教育」への失望 カリスマ経営者が元東大教授と挑む大学改革
既存の大学からは永守氏の発言を大学教育のあり方を理解していないとの異論も出る。京都大学のある専任教員は「人としての成長や基礎研究についてのインプットも大学教育では求められる。実業教育に特化するのはいかがなものか」と主張する。
関東トップ私大の元学部長も「昔は企業が大学教育で余計なことをせずに『真っ白な』人材を出せと求めていたのに、(経済)成長が持続しない時代で企業が社内教育にコストをかけられなくなったからといって大学に人材育成の責任を転嫁している」と反論する。
永守氏の指摘を歓迎する声も
一方で、実業界からは永守氏の指摘を「よくぞ言ってくれた」と歓迎する声もあがる。京都の大手電子部品メーカー役員は「電子機器の技術発展は著しいのに、日本の大学のカリキュラムはその発展に追いついていない。大学では教えないが産業界では常識となっている技術の基礎を採用後に一から社内で教えなきゃならない」と企業内教育の負担が重くなっていると明かす。
京都先端科学大学の前田正史学長は「即戦力というのは与えられた環境で課題を解決する道筋を自分で考えて、そのために必要な道具を自分で用意できるようにすることだ」として、特定の技能だけを身に付けさせるわけではないと話す。
前田氏は大学の改称に合わせて今年4月に学長に就任。東京大学生産技術研究所所長や東京大学の副学長を経験し、永守氏率いる日本電産の生産技術研究所所長も務めた人物でもある。「30代から大学のあり方像などの勉強会に参加してきて、大学教育はどうあるべきかを考えてきた」(前田氏)。むしろ時代に合ったカリキュラムを提供できていない大学側にも問題があったと前田氏はみる。
前田氏は設置認可を申請中の工学部を例に、既存の大学教育の問題点をこう指摘する。「150年間学部の学科構成は大きく変わらず、それぞれ縦割りのカリキュラムが組まれた。しかし、今は機械を動かすのにソフトウェアが必要になったように明治時代と比べて学生が学ぶべき領域は広がっている。幅広く学べる融合されたカリキュラムを実現するためにも150年の歴史をぶっ壊す」。
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