日本電産永守氏が語る「今の大学教育」への失望 カリスマ経営者が元東大教授と挑む大学改革
京都先端科学大学が大胆に改革をできるのは私立大学だからでもある。「国立大学とは違い、運営元の学校法人の了承さえあれば割と容易にできる」(前田氏)。自由にカリキュラムの変更や教員の採用ができない国立大学に比べ、私立大学はやろうと思えば柔軟に変化できる。
2020年に設置を予定している工学部では専門科目の授業を英語で行うことを計画しているが、同様の計画を国立大学で実施しようとすると数年単位の時間がかかってしまう。
また亀岡キャンパス(京都府亀岡市)には電気自動車のテストコースやドローン(小型無人機)演習場の設置も構想。研究施設の建設が次から次へと実施や計画されるスピード感は、永守氏の寄付金と私立大学の組み合わせがなせる技だ。
リベラルアーツ教育も重視
京都先端科学大学への改称で産業界のために理系へ特化した大学になるかという疑問も出るが、同大は人文学部、経済経営学部、健康医療学部、バイオ環境学部の4学部構成の総合大学だ。これに設置を計画する工学部を加えて、永守氏は京都先端科学大学を世界大学ランキングで200位以内にすることを目指すと話している。
総合大学としてリベラルアーツ教育も重視して、人文学や社会科学をおろそかにするわけでもない。「今後のロボットや機械は人の動きに合わせて予測不能な事態に備えるプログラムが必要だが、理学や工学だけでは人や社会の動きを理解するのに不十分。人を理解するためにも人文学は必要な学問だ」(前田氏)。
一連の急速な改革とその方針が受験生にも伝わり、学生の募集にも変化が出始めている。旧京都学園大学は「京都内の評判では最もボトム(底)の評判だった」(同大関係者)が、今年の入試志願者数は前年の1.6倍の2435人に増加した。「これまでは近畿大や関関同立など関西の上位大の併願校にすらならなかったが、滑り止めとして併願する学生も出始めている」(学習塾関係者)。
「20年、30年の長期スパンで一部の領域で東大や京大は抜けると思っている」(前田氏)。カリスマ企業経営者と大学教育のあり方を追求した元東大教授が国立大学で難しかった社会に求められる教育改革を徹底できるのか。評価が見えるのは当分先になりそうだ。
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