りぼん男性編集長が仕掛ける異色アイドル漫画 20~30代女性が小学生向けコミックに熱狂

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本作の主人公は、元アイドルの高校1年生。ミニスカートの衣装をウリにした少女アイドルグループ「ピュアクラブ」の“センター”として人気を博していたが、握手会で謎の男に刃物で腕を切りつけられ、アイドル活動を休止。現在は、事件のトラウマからか、自身のアイコンだった黒髪ロングヘアを短く切り、スラックス姿で高校生活を送っている、という設定だ。

ストーリーは、トラウマを抱えた主人公が1人の少年との出会いを通じて成長していく過程を軸に描かれており、あくまで少女漫画のスタンダードな文法をふまえている。だが異例なのは、現実社会のジェンダーの問題に、真っ向から向き合っていること。

冒頭のシーンのみならず、ストーリー中には「女性性を商品にするアイドルが男に襲われるのは当然」「“ブス”が女性専用車両に乗るのは自意識過剰」といった、ポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)として女性差別とみなされながら、日常生活に厳然として存在する価値観への問いが、次々と投げかけられ、「自分ならこのシーンでどのようなスタンスを取るだろうか」と考え込まずにはいられない。

作者が連載に込めた思い

作者の牧野氏は、「性別や与えられた価値観などにとらわれず、自分のことは自分で決めて、後悔しない生き方をしてほしい。そういうことを考えるきっかけに、この作品がなればいいと思う」と連載に込めた思いを語る。

ただ、前述のように本作品は小学生向けの少女漫画だ。それにもかかわらず広い読者層を獲得できたのには、明確な仕掛けがあった。

駅や電車内の交通広告やSNS上で展開された『さよならミニスカート』の宣伝広告(集英社提供)

「このまんがに関しては、何があろうと、読者のみなさんに面白さが伝わるまで、連載をし続けていきます。それくらいの覚悟を示せるまんがと出会ってしまったのです」

連載が開始された2018年8月、集英社は、文章が羅列する「宣言文」のような広告を、書店や駅構内、SNS上などで大々的に投下した。

とくにツイッターとインスタグラム上で打った広告は瞬く間に拡散され、半年間で累計70万もの反応を獲得した。この広告に文章を寄せたのが、2カ月前に『りぼん』新編集長に就任したばかりの相田聡一氏だった。

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