実は相田氏、『りぼん』に配属されるまでは『ジャンプ』編集部にいた。漫画編集者を志して入社すると同時に、希望していた同編集部に配属され、入社2年目で『ボボボーボ・ボーボボ』、6年目で『家庭教師ヒットマンREBORN!』、10年目で『バクマン。』を立ち上げるなど、誰もが認める剛腕編集者だった。
面白い漫画を愚直に追求してきた相田氏ゆえに、異動後目の当たりにした『りぼん』の”守り”に入った雰囲気を変える必要性を強く感じていた。そのとき出会ったのが、ほかでもなく『さよならミニスカート』だったのだ。「この作品であれば、大人が読める。そして一度読んでもらえたら、質の高さがわかると確信した」(相田氏)。
「宣言文」を出した背景
そこで打ち出したのが、本作品に対する宣言文を、駅構内やSNSでゲリラ的に打ち出すという、斬新な宣伝手法だった。制作期間はわずか1カ月。広告の背景にする漫画の絵が出来ておらず、ネームを組み合わせて何とか連載開始に間に合わせた。
第1巻の発売時には、特設サイトの開設や動画広告も作成した。これらの企画を進めたのは宣伝部だが、「相田編集長は、これまでやったことがないような宣伝の仕方を提案しても、『やってみればいいんじゃない?』と驚くほど協力的だった」(前出の宮崎氏)。
これまでの『りぼん』にとって、2008年にデビューし、これまで手がけた連載は2本という牧野氏の作品を押し出すのは挑戦だった。
集英社としても、雑誌で連載が開始した時点から広告を打つというのは異例。
【2019年4月15日15時00分追記】初出時の広告・宣伝についての表現を一部見直し、表記のように修正しました。
ただ、ふたを開けてみれば、一部のインフルエンサーによるネット上での発信も後押しし、話題が話題を呼ぶ好循環を生み出せた。
広告宣伝に加え、20~40代の男性読者が多い同社の少年漫画誌『ジャンプ』の電子アプリ、「ジャンプ+」でも連載が読めるようにした。これで、『りぼん』を買うことに抵抗がある人でも連載を追えるようにもなったことも、読者層拡大に一役買った。
3月末には、『さよならミニスカート』第2巻も発売され、連載開始時を踏襲して宣言文形式の広告を出した。その中に、こんな一文がある。
「少女マンガはいつだって、女の子たちの味方だから。」――。
これは作品から読者へのメッセージであると同時に、相田氏率いる『りぼん』編集部が自身のあり方を問い直し、“少女漫画復権”を懸けた戦いに挑んでいくことを宣言しているようにも読める。
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