ただその自己成長は、「会社の仕事ができるようになること」を意味するわけでなく、「どこの会社でもやっていけるような実力がつき、市場価値が高まること」を意味する。この違いは大きいと瀬戸口社長は指摘する。市場価値を意識している人は、会社で活躍していたとしても、「実は外では通用しないのでは」と不安を抱いているからだ。
「世の中での市場価値が高まっているという成長感覚が得られないと、優秀な社員ほど危機感を覚え、転職を考え始める。かつては、(企業の中で上位、中位、下位の割合が)2:6:2の法則でいうと、下位の2割の社員がすぐに辞めることが多かったが、今は上位2割の社員が先に辞めていく」(瀬戸口社長)
優秀な人材の流出を少しでも防ぐためには、彼らに「今の会社で一生懸命働いていれば、成長でき、他の会社に行っても通用するようになる」と理解してもらうことが欠かせない。他社に転職されたくなければ、逆に「将来、転職できる」という安心感を与えなければならないわけだ。
「会社にとどまること」に価値を見いだしてもらう
そのうえで重要になるのが、新人研修だという。キャリアに悩む若手に対して、「今の会社の仕事が、将来につながる」という考え方を伝え、計画立案や課題設定といった、どの会社にも持ち運べるポータブルスキルを教える。こうして「今の会社にとどまること」に価値を見いだしてもらうのだという。
エクシングも、新人研修制度を刷新したのは、「自己成長」意欲に応えるためだ。かつて同社は、キャリアに悩んで離職する新入社員が多く、かつては、新入社員が1年で15%離職してしまったこともあった。
「弊社はエンタメ系企業の位置づけだが、他の会社と同様に、泥臭い仕事も多い。その泥臭い仕事も、将来のキャリアを築くうえで重要だが、それを理解してもらいづらい。そこで、新人研修で、キャリアに対する考え方をしっかり伝えることが必要だと考えた」(池畠氏)
採用活動中に学生から研修制度についての質問が多くあったことも、制度の見直しに着手した理由の1つ。学生も、研修の重要性を認識しているという。
「新人をできるだけ早く戦力化したい」という思惑から新人研修制度を拡充させる企業も少なくない。しかし、入社後、数週間の配属前研修で、知識を一方的に詰め込むだけでは、その後の仕事に生かせる人は少ない。研修の内容が受講者にきちんと身に付く教え方が必要だ。
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