社員を辞めさせないための「新人研修」最新事情 フォロー研修を重点化する企業が増えている

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そこで、今、さまざまな研修会社が新たな新人研修メニューを提供している。ファーストキャリアでは、「点ではなく線と面の研修」を掲げ、数年かけて新入社員をサポートし、成長を支援する研修プログラムを設計している。エクシングの新人研修も、ファーストキャリアが協力し、両社で作り上げた。

大きなポイントは、従業員をじっくり育てるために、2年間のプログラムに変えたことだ。それまでは、配属前に研修を行った後、入社半年後に振り返りの研修を行う程度だった。「どのような人材になることを目指すかをゴールに置き、そこから逆算して、マイルストーンを設置している」(瀬戸口氏)

内容は大きく分けると、1年目はキャリアアップについての考え方、2年目は、ロジカルシンキングや課題解決など、ビジネススキルが中心だ。キャリアアップに関しては、今の仕事を将来のキャリアにつなげていくための考え方を解説したうえで、ワークを実施し個々に考える機会を与えている。

冒頭で紹介した入社1年目の最後となる3月の研修では、自分の気持ちを捉えたり、自分の価値観を再確認したり、と自分の内面を見つめ直した後、改めて目標を設定し、アクションプランを立てる内容になっている。

入社前や入社直後に行う研修にも思えるが、「1年間働いたからこそ、腹落ちすることがある」のだという。「内省にしてもスキルを学ぶにしても、学ぶのに適したタイミングがある。そのタイミングに合わせてプログラムを組んでいくことで、学習内容が社員に定着しやすくなる」(瀬戸口氏)。

研修内容を仕事に反映させる仕組み

また、このエクシングでの研修では、一方的に講義をして終わりではなく、その内容を生かしているかどうかを継続的にチェックできる仕組みを導入した。それが「アクションT.C.」という仕組みだ。

新入社員たちが毎月、目標を定め、社内のイントラネット上で発表。1カ月後に、その目標が達成できたかを振り返る。これを半年間行い、研修の内容を実際の仕事に定着させることをもくろむ。研修に参加していた1年目の社員からは、「アクションT.C.があることで、毎月、自分を振り返ることができ、自分を律することができた」という声が聞かれた。

こうした新人研修制度を導入した効果は、はっきりとあらわれている。導入以降、新入社員の定着率が上がったという。「研修の満足度は高い。成長を実感できていることに加えて、定期的に同期と顔を合わせることも刺激になっているようだ」(池畠氏)。

同期と定期的に交流する機会をつくることは、普段1人で営業をしていたり、同期のいない地方支社への配属になったりした人が、孤独感を和らげられる効果もある。実際、受講者からは、「同期と会えることがうれしい」というコメントも聞かれた。アクションT.C.も、半年間、目標達成を迫られ、負担になる面はあるが、同期と交流し合えるという側面もあるようだ。

自己成長を実感でき、同期とも交流できる。そんな新人研修制度の整備は、優秀な人材を採用し、かつ早期の離職を防ぐうえで、不可欠になりつつある。長年、代わり映えのしない新人研修を行っている企業は、再考の余地があるかもしれない。

杉山 直隆 オフィス解体新書・代表

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すぎやま なおたか / Naotaka Sugiyama

1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネス誌やビジネス書、企業の社内報・PR誌の執筆・編集を主に手がける。2016年に独立(屋号:オフィス解体新書)。社会人インターンシップ情報を紹介するブログメディア「30歳からのインターンシップ」を立ち上げ、取材活動をしている。共著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』『図解&事例で学ぶ入社1年目の教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。

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