「ロジック完璧」でも企画が通らない人の盲点 世界の有力コンサルタントが教える「腹落ち」

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ここで言うストーリーとは、単なるロジックフローではなく、感情の入り込んだロジックフローのことである。やってみたいとか、ワクワクする、あるいはやっていることが目に浮かぶなどの感覚をもたらすものである。もちろん、その逆のやりたくない、不安であるといった感覚をもたらすこともあるような話の展開もありうる。

例えば、さきほどの業界第4位のメーカーへのM&Aの提案のケースでも、別のストーリーを用意したら、相手の受け取め方は変わっていたはずだ。

ロジックフローは変えない。「業界4位のメーカーが単独で生き残るのは困難なので、グローバル大手とアライアンスを組むべき」のままだ。

しかし、提案相手は「自分の目が黒いうちは会社を売るような真似はしない」とまで言っていた社長だ。

そこで、ストーリーが必要となる。例えば、グローバル大手と資本提携はするが、会社名は残す、ブランド名は残す、経営も自分たちで行う。こうしたストーリーとともにM&Aを提案していたら状況は変わっていたはずだ。少なくとも買収されるというデメリットにだけ目がいくことはあるまい。少なくとも「頑として」提案を受け入れないという態度ではなかったと思う。資本を受けられる、生産の協力態勢が整う、マーケットが拡大するなどのメリットに目が向いただろう。

「グローバル企業の傘下に入る」という提案は同じでも、納得できるストーリーがあるかないかで相手が受ける印象は大きく変わってくるものだ。

「夢と希望」で心を惹きつける

企画や提案を考える際には情報を収集し、論理的に分析を行うことが非常に大切であり、その分析プロセスなしに正しいロジックフローを組み立てることはできない。ロジックが破綻している企画や提案を実行してもうまくいかないだろう。

だが、どんなに緻密に分析をして正しいロジックフローが出来上がったとしても、それだけでは人やビジネスを動かせないのも事実である。

人は誰しも未来に夢や希望をもてる企画や提案に心を惹かれるものだ。自分や会社の輝かしい将来像を思い描いてワクワク・どきどきする。

逆に、明るい未来を想像できない企画や提案には拒否反応を示す。自分や会社の将来に希望がもてないから前向きに考えられず、「よし、やってみよう」「頑張ってみよう」という気持ちにはならない。夢や希望のない企画・提案は、相手に行動を起こさせる動機づけにならないのだ。

だからこそ、「腹落ち」には右脳で語る要素、ストーリーが重要となる。客観的に見れば将来を悲観してしまうようなロジックフローを、感情に働きかけることで未来に希望がもてるストーリーに変えられれば、相手の気持ちを動かすことができるだろう。

苦労して作りあげたロジックフローを無駄にせず、ビジネスに生かすためには右脳による肉づけ、ストーリーが必要不可欠なのだ。

今回はビジネスにおけるストーリーの重要性について解説した。優れた企画・提案には当事者の思い・責任感があるのが大前提だ。加えて、採用・不採用の意思決定者に刺さるようなストーリーが必要になる。

内田 和成 コンサルタント

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うちだ かずなり / Kazunari Uchida

東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(アメリカ『コンサルティング・マガジン』)に選出された。2006年より2022年まで早稲田大学教授。著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(以上、東洋経済新報社)などが多数。

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