「私が台湾で教えている頃は日本人の指導者がたくさんいたので、どちらかといえば日本寄りの野球をしていたと思うんですが、今はアメリカ寄りです。投手も野手もパワーを重視していますね。
彼らは素質では日本に負けない。日本と台湾のトップ20人ずつを集めて、ナショナルチーム同士で試合をしたら、そこそこいい試合になります。ただ、その下のクラスの選手同士で試合をしたら、日本が圧勝するでしょう。日本とは選手層の厚さが違うんですね。でも、人口の絶対数が日本の6分の1と少ないので、仕方がない部分はあります。
気になるのは、最近の台湾の投手は、パワー系に走りすぎて繊細な日本野球には通用しない部分があることです。うちの郭俊麟も、台湾時代はナショナルチームのエースでした。日本でも出だしはよかったんですけど、自信を失ってしまった。怖さを知ってしまったという感じですね。ここ4年、少し苦労しましたが昨年終盤好投したので、今年はやるかな、と思っています」
台湾は「選手の市場」としても期待しているという。
「NPBで通用する選手もいるので、市場としては有望です。ただCPBLから直接移籍するとなると、移籍金が発生したりする。相手がポスティングを容認してくれないと採れないし、まだまだシステムが整備されていないと思います。その辺をしっかり見極めて、うちの足りないピースを埋めてくれる選手がいるなら、積極的に採りに行きます。
アマチュアにはそういう制約がないので、私は昨年も台湾の各世代の試合を見に行って、チェックしています。ただ本当にいい選手になると、MLBが絡んでくるので難しいですが」
渡辺GMは、台湾を選手の市場としてだけでなく、球団のマーケットでもあると認識している。
「親会社(西武ホールディングス)も台湾にホテルを持っていますし、西武鉄道と台湾鉄道の友好条約の締結には、私も立ち会いました。グループにとっても台湾選手が活躍するのはメリットがあります。うちは選手が3人、コーチが1人と台湾勢が4人います。台湾などアジア市場も考えてチーム作りをしています」
台湾野球界の期待感も高まる
台湾の野球界でも、日本との連携が強まることへの期待が高まっている。CPBL(中華職業棒球大連盟)の宣推部主任である劉東洋氏は語る。
「王柏融選手は台湾プロ野球CPBLで2年連続で打率4割超えを記録し、初めて旅外選手資格(ポスティング)を利用して海外球団への移籍を果たした選手です。台湾国内では注目度が高いです。
今までも日本プロ野球界で活躍した選手はいます。郭源治、郭泰源、荘勝雄の3選手は台湾では“二郭一荘” と並び称され、国民的英雄でしたが、彼らは皆投手でした。それだけに、台湾のファンは王柏融の国外流出を残念がる一方で、CPBL屈指の強打者が日本プロ野球界でどこまで通用するか、期待しています。世界に中華職棒(台湾プロ野球)の実力を見せてほしいですね」
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