炭素税の本格導入といっても、大衆課税という話にはならない。そもそも、温室効果ガスを排出しないなら、税は課されない。温室効果ガスを今は多く排出しているが、排出量を自主的な努力によって減らせば税負担は減らせる。太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気を使えば、CO2を排出していないから、炭素税を負担することはない。ガソリン車でなく電気自動車なら、走行においてはCO2を排出していないから、炭素税を負担することはない。
ただし、現在わが国では温室効果ガスを約13億トン排出している。そのうち約4割は発電時に生じている。そして、現行の温対税は、化石燃料の輸入または採掘時点に低い税率で課税しているだけにすぎず、ほかの排出源の温室効果ガスには課税していない。ほかの排出源の温室効果ガスにも課税するとなると、今まで税負担をしていなかった企業や家計に負担を求めることになる。
炭素税は、産業界に根強い反対がある。地球温暖化防止は世界的な課題なのに、日本だけ高い炭素税を課せば、日本企業の国際競争力が低下して、日本での生産活動が萎縮したり海外に生産拠点が移りかねない。また、そもそもエネルギー多消費型産業では、炭素税が課されると他産業より多く税負担を強いられて当該産業の発展が妨げられることになる。
炭素税導入には産業界の懸念払拭が必要
こうした懸念が軽減されなければ、わが国において炭素税の本格導入は困難だろう。今のところ、環境省の会議で議論されているにとどまり、財務省に検討の動きはない。政府税制調査会で議論の俎上に載らない状況では、導入までの道のりは遠い。加えて、温対税以外にも、石油石炭税や揮発油税などのエネルギー課税もある。これらのエネルギー諸税を炭素排出量と比して換算すると、わが国ではCO21トン当たり約4000円となるとの試算もある。
ただ、ほかのエネルギー諸税は、CO2排出量比例になっていない点には注意が必要だ。また、それらの税負担によって、日本企業の国際競争力が低下し、日本での生産活動が萎縮したり、海外に生産拠点を移したりする性質があるのも事実である。炭素税だけが引き起こす現象ではない。
当面は、温室効果ガスの排出量を緩やかにしか減らせない状況下で、地球温暖化防止のためにできる方策として、炭素税も有効な選択肢として排除できない。炭素税については、企業活動に支障をきたさないようにしながら、どのような制度を設計するかが問われている。
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