前掲の小委員会では、主に排出量取引と炭素税について、2018年7月から議論を続けている。その背景には、2016年11月に発効したパリ協定がある。
パリ協定では、加盟各国に対して温室効果ガス排出量の自主的な削減目標を国際連合の条約事務局に提出して維持することと、その削減目標の達成のために国内対策をとることを義務づけている。日本は、2030年度における温室効果ガス排出量を2013年度比で26.0%減(2005年度比で25.4%減)の水準とする目標を提出した。そのうえで、長期的目標として2050年までに2013年度比で80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことを、安倍内閣で閣議決定している。
国際公約している温室効果ガスの排出削減目標は、民間の自主的な取組みだけで達成可能なのか。今公表されている民間の取組みを集計しただけでは、達成する見込みはない。そうなると、追加的な政府による施策が必要となる。
温暖化対策増税、炭素税の導入が浮上
そこで議論となっているのが、排出量取引と炭素税である。排出量取引と炭素税が、政府の会議で議論の俎上に載せられるのは、今に始まったことではない。ただ、消費増税を2度先送りした安倍内閣の下での社会保障改革の議論は、消費税を10%に引き上げることを催促しかねないため、事実上封印されていたのに対し、排出量取引と炭素税の議論は容認されていた。
炭素税は、二酸化炭素の排出量に対して課す税で、課税することでその排出削減を促す狙いがある。税率は、CO2排出量1トン当たりの金額で表示され、まさに炭素価格を意味する。日本では、地球温暖化対策のための税(温対税)が炭素税と分類される。温対税の税率は、CO21トン当たり289円で、税収は約2600億円である。わが国の税率は、主な炭素税導入国の中では低い水準にある。
こうした背景から、わが国の温室効果ガスの排出削減目標を達成するためには、温対税の現在の税率では温室効果ガスの排出抑制に対して不十分であり、温対税の大幅増税、あるいは炭素税の本格導入が選択肢として浮上してきた。
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