世界中の野球ファンが、一時代の終わりを感じたかもれない。「野球界のレジェンド」イチローの引退は世界のメディアに大きなニュースとして伝えられた。彼の引退会見や数々のエピソードから見えた「世界に愛されるイチロー流コミュ力」について、ひも解いてみたい。
「後にも先にもイチローはイチローだけ。彼は野球選手であり、ロックスターであり、国際的なセレブリティーであり、そして、もし彼がジェームズ・ボンドの映画の中に出てくるようなスーパースパイだったとしても驚きはしない」。MLBのサイトに3月22日に掲載された記事にこう記されている。
同じサイトに掲載された「イチローは史上、最も愛される野球選手なのか」という別の記事には「彼には敵がいなかった。誰も彼を嫌わず、ブーイングをすることもなかった」「人生をとことん楽しむ姿、研ぎ澄まされたユーモア、そして、強烈で、ほとんど神秘的なほどの(野球への)献身が、人々の心をとらえて離さなかった」「彼の生き方はあらゆる年代、国境を越えて、共感された。
彼は何百万人という人に野球の魅力を気づかせた。こういった、そしてもっと多くの理由から、イチローが野球史上最も愛された選手であると信じている」とある。
ファンを魅了したのは野球の技法だけではない
打撃や守備など野球の技法・技術、輝かしい実績だけではなく、試合前の儀式的なルーティーンや求道者のようにストイックな鍛え方に至るまで、彼の生き方そのものの高い精神性、神秘性が世界の野球ファンを魅了し続けてきた。
今、ツイッターなどソーシャルメディアは、多くのメジャーリーガーやチーム、世界の野球ファンの、イチローの功績をたたえ、引退を惜しむコメントであふれかえっている。海を越え、国境も言葉も越え、まさに世界に愛された不世出のプレーヤーということだろう。
日本で9年、アメリカで19年の計28年の選手生活を締めくくる引退会見にはそうした彼の魅力が、ほとばしり出ていた。特に印象に残ったのは、つねに自然体な受け答えと、記者を気遣い、対話をしながら、話を進めるコミュニケーションスタイルだ。「え、おかしなこと言ってます、僕。大丈夫です?」「聞いてます?」など、一方的に話を進めるのではなく、つねに記者の反応を確認しながら、聴衆を巻き込んでいく。
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