千葉で「野生イノシシ激増」の現場に見えた難題 館山では人の生活圏に動物が入ってきている
キャンプ2日目の朝、石井さんの父(72歳)から、「箱わなに、イノシシ3頭がかかった」と連絡があり、急きょ、講師の加藤さんがイノシシ肉をさばく作業を見せる展開になった。
「野外計画」の八木信行さん(68歳)は「スケジュールになかったことなので、参加者一同、びっくり。キャンプの食事は自炊ですが、加藤さんによる解体作業を見た後、そのイノシシの肉を、あらかじめ加藤さんが持ってきた肉や手作りのソーセージとともに味わった。おいしかったですよ」と話す。
石井さんはこのとき、初めてイノシシの肉を「おいしい」と思ったという。「農業被害を防ぐため、父は箱わなをしかけてはイノシシを捕獲し、それをさばいて冷凍庫に入れていましたが、イノシシ肉は家族には不評でした。固いし、臭いし。ここのイノシシはミミズばかり食べているからまずい、とも言われていた。それなのに、加藤さんがさばいたイノシシの肉は柔らかい。脂身に甘味があっておいしい。さっぱりしている。衝撃でした」。
加藤さんは、全国を歩き、名の知られたハンターのもとで修業。各地のセミナーにも参加して、イノシシ肉のさばき方を身に付けたという。
石井さんは、肉のさばき方に秘訣があると知った。
ドングリ食べたイノシシ肉、格別のおいしさ
地域おこし協力隊員として館山市で獣害対策支援を行う沖浩志さん(36歳)は、「館山の山には、炭焼きに使うマテバシイというドングリのなる木が多い。炭焼きは行われなくなったが、秋から冬にかけて、山にはドングリの実がたくさん落ちている。それを食べ、走り回っているので、ここのイノシシはおいしいのではないか」と考えている。
イベリア半島にあるスペイン産のイベリコ豚は、「ドングリを食べているからおいしい」をうたい文句に、日本で人気を博した。館山のイノシシの味はイベリコ豚の味に似るはず、というわけだ。
ただ、たまたま捕獲したイノシシの肉を家族や知り合いに分けて食べることはできても、それを売ることはできない。保健所の許可を受けた解体施設を作り、県が主催する講習を受ける必要がある。
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