千葉で「野生イノシシ激増」の現場に見えた難題 館山では人の生活圏に動物が入ってきている
同じ神余地区で、忙しいスケジュールの合間を縫って農作業も行う館山市議会議員、鈴木正一さん(68歳)は、「近隣のほかの市町村でイノシシの被害が悪化したため、『いずれはこちらにも来るぞー』と6年前に館山有害鳥獣対策協議会ができた。でもまさかこんなに増えるとは思ってもみなかった」とため息をつく。
館山市のイノシシ捕獲数は、2008年度には31頭だったのが、倍々ゲームで増え、2018年度は3月上旬までで950頭と、1000頭にも迫る勢いで急増。10年間で32倍にもなった。狩猟免許を取る人が増えたことをはじめ、協議会の努力もあるが、「野生イノシシの繁殖力の尋常でない強さ」(鈴木市議)が大きいという。
住宅地にも生息圏が拡大、サルの群れも出現
神余集落の近くには、「東紅苑」という住宅地がある。もとは分譲別荘地だったが、今は5割近くの住民が定住している。6年前、両親に合流する形でここに住み始めた加藤茂さん(39歳)は証言する。
「イノシシが庭に入ってくるんです。近所の家では、庭を掘って水道管を壊し、水が噴き出した。気づいたときには、もう庭が沼になっていました。空き家の庭にウリ坊たちが集まり、合宿所みたいになってしまったこともあります。チビたちが住宅地内の道路をテコテコ歩き回る始末。追い払うのが大変でした」
加藤さんは本業の翻訳・通訳のほか、紀州犬、四国犬などの日本の犬を猟犬として訓練する仕事をしている。銃やわなを使える狩猟免許を持ち、犬とともに地元の有害鳥獣駆除隊に加わることもある。一昨年、2017年の12月24日に起きたことは、忘れられない。加藤さんは振り返る。
「犬2匹とともにイノシシを追って山に入った。ちょうど竹やぶの上のほうに60頭余りのアカゲザルの群れがいた。犬の1匹が山の奥のほうに入って戻ってこないので、私が見に行っているうちに、残った1匹がサルに囲まれ、ボコボコにされた。駆け付けた直後、犬は数歩歩いて倒れた。
動脈をかまれて出血がすごく、脚も肉が骨から離れ、靱帯が切れて骨が見えていた。頭もやられ、耳がぶらぶらしている。抱き上げて山から降ろし、動物病院に連れて行った。病院の措置のおかげで犬は一命をとりとめたが障害が残り、猟から引退しました」
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