結婚5年で別れた銀行員が妻から受けた壮絶DV 殴る、蹴るはもちろん罵倒、監視、締め出しも

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どうやら、桃子さんは部屋に監視カメラをセットしていたらしく、敦さんが部屋に入ったとわかると、すぐに警察に通報したらしい。

「本当に、あのときの警官の態度は頭にきましたね。自宅に入るのに、不法侵入なんて成り立たないはずなんです。なのに、男というだけで不審者扱い。自分の家に入ろうとして、なんで悪いのか、教えてほしいですよ」

話を聞いてくれない調停員

その後、桃子さんとは離婚へ向けて動き出すこととなった。自分へ向いていた分の暴力が子どもにいくかもしれない。敦さんは、それが何より心配だった。そのため、子どもの親権だけは取ろうと思った。

「調停員は、70代くらいの男女で、母親に親権が渡るのが当然のような態度なんです。『離婚して月1回会えばいいじゃないですか。それの何が問題なんですか』と言ってくる。僕が、子どもたちが虐待されるかもしれないと涙ながらに訴えても、まったく聞き入れてくれない。ましてや、僕がDVを受けたなんて言ってもお互い様と言って、まったく取りあってもらえませんでした」

離婚は成立したものの、結局親権は母親で、敦さんは月1回の子どもとの面会という条件に応じるしかなかった。

敦さんは、1人でいると次第に死にたいと思うようになっていった。車を運転していても、そのまま突っ込めば、楽になれるのに、と思ってしまう。それでも何とか踏みとどまっているのは、子どものことを考えたからだった。敦さんは、DVの診断書を取っていなかったため、自らの言い分を立証することができなかった。

元裁判官の男性は、敦さんの事例について、「男性が加害者、女性が被害者、子どもは母親が育てるほうがいいという先入観を裁判所が持っている以上、男性も被害を受けたら診断書を取ったり、育児休業を取得したりして、『証拠』で覆す必要がある」と話している。

現在、敦さんは精神科で双極性障害と診断され、会社を休職している。桃子さんのDVと子どもへの不安が影響しているのは明らかだ。

「離婚してから何のために生きているのかわからなくなったんです。いちばんは子どもを奪われたのが大きい。子どもが虐待されているかもしれないと思うと、毎日心配でたまりません。こんな理不尽が許されるのかと思うんですよ」

5年間の結婚生活と離婚によるダメージは、敦さんの精神をもむしばみ、人生を根底から大きく変えたのだった。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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