日本初のW杯で主将、井原正巳の苦悩と充実感 1998年サッカーW杯フランス大会も振り返る

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1998年6月14日のフランスワールドカップ第1戦アルゼンチン戦での井原正巳氏(写真:写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

1月の2019年アジアカップ(UAE)で決勝まで勝ち上がりながら、伏兵・カタールに苦杯を喫し、準優勝に終わった森保一監督率いるサッカー日本代表。あれから1カ月以上が経過したが、2020年東京五輪世代である20歳のセンターバック・冨安健洋(ベルギー・シントトロイデン)の目覚ましい働きは、今もなお多くの人々に賞賛されている。

「冨安はあれだけのサイズ(188㎝)がありながら、技術的にもしっかりしていたし、フィジカル的にも年齢に応じて向上していった。アビスパ福岡にいた頃から『まだまだ伸びしろがある選手』だと思っていましたけど、ベルギーに行ってより逞しくなっているなと。

あの年代で世界のスタンダードを感じながら戦えるのは本当に前向きなことだし、さらに成長できると思いますね」としみじみ語るのは、福岡時代に3年間、監督として直々に指導した井原正巳氏(現・J2柏レイソルヘッドコーチ)である。

この20年で日本人DFを取り巻く環境は激変した

かつて「アジアの壁」と称された日本代表DFが史上初のワールドカップの大舞台に立ってから21年。日本は6度のワールドカップに出場し、ベスト16入りを3度経験するに至った。

教え子の冨安のみならず、2014年ブラジル・2018年ロシアの2大会を経験した吉田麻也(イングランド・サウサンプトン)、ロシアのメンバーである昌子源(フランス・トゥールーズ)や植田直通(ベルギー・セルクル・ブルージュ)のように日本人DFの海外進出が急増し、各クラブで重要な役割を担うようになってきている。その劇的な環境の変化には井原氏も驚きを覚えているという。

日本人DFを取り巻く環境の変化について語る井原正巳・柏レイソルヘッドコーチ(東洋経済オンライン編集部撮影)

「今まで日本サッカーでいちばん足りないところと言えば、ゴールキーパー(GK)、センターバック(CB)、センターフォワード(CF)。そこの強化の必要性は長い間言われたことです。

そういう中で海外で活躍するCBが出てきたのは、必ず次につながる。麻也がプレミアリーグで活躍し、冨安が出てきて、昌子もフランスに行き、ウチ(柏)の中山雄太(オランダ・ズウォレ)も挑戦して、そこで実績と自信を積み重ねることは本当に大切ですよね。

僕が現役だった頃は跳ね返すのがCBの基本だったけど、今はオールラウンドの能力がないと世界では通用しない。フィジカルの強さ、高さ、スピード、攻撃のビルドアップ。特に日本が今、やろうとしているサッカーはつなぎの部分がより求められますね。

加えて日本人のよさを生かすことも重要。単純なフィジカルだけではアフリカの選手には絶対にかなわないけれど、マメさや緻密な準備、横着せずに90分間やり続けることでカバーできる。グループでやることで個の足りないところはカバーできると思いますね」

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