東海テレビ「ドキュメンタリー映画」への執念 プロデューサー&監督に聞いた「続ける理由」
インタビューが終わっても回し続ける
──作品に阿武野さんの好みは影響しているのでしょうか。
阿武野:頑固ねぇ。口のわるい人は「変なおじさんシリーズ」とか言っていますが(笑)。僕は題材について口出ししたことはない。唯一「名張をやってほしい」と齊藤に言ったことぐらい。あとはすべてディレクターがやりたいと持ってきたものです。
きっと社会的に片隅に追いやられてきたような人たちが、どんな暮らしをしているのか。それを追っていくと、社会を映し出す鏡のようになってきたということかもしれません。
──樹木希林さんが伊勢神宮を訪ねるドキュメンタリー『神宮希林 わたしの神様』(伏原健之監督・2014年公開)の最後のほうに、立ち寄った飲食店でお土産にと渡されたものを、希林さんが「使わないから」と返す場面がありますよね。お店の女性が姉さんタイプで、2人が譲らない。
阿武野:あれは法被(はっぴ)でしたよね。つまらないエピソードのようにも見えますが、物を無駄にしないという人生観が出ている。
──角が立たないようにその場ではもらってく人が多いだろうに。
阿武野:取材がほぼ終わっているときに、あのやりとりがあった。後で見返していたときに、ここには重要な意味があるとわかってきたんですね。
──しつこく撮るというのは、東海テレビの伝統なのでしょうか。
阿武野:これでインタビューは終わります。「ありがとうございました」と片付けに入ったりしている間、職業病なんですかね、ディレクターというのは沈黙が嫌で「終わった」と言いながら話しかける。それをカメラマンも撮っている。
齊藤:なかには「終わります」と言ってからが勝負ということもあります。阿武野から「終わったあとにポロッと本音が出ることが多い」というのを聞かされてきたこともありますし、核心に迫ろうと思うと「そのまま回しておいてね」とカメラマンに言ったりもします。いつもそうしているわけではありませんが。
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