平成最後の冬は、映画『ボヘミアン・ラプソディ』とともに記憶されるだろう。
興行通信社によれば、公開(11月9日)から12月2日までの間で、日本国内での興行収入を30億円台に乗せている。この期間の週末、都心の映画館は終日完売が続出した。
また、「ムビコレ」のサイトにはこんな記事も掲載された。タイトルは「クイーン世代の中高年から20代までが支持! リピーター続出で大ヒット『ボヘミアン・ラプソディ』」。
つまりこの映画は、過去のロックバンドの映画ながら、「若年層需要」と「リピート需要」という、映画(エンタメ)界的にとても魅力的な需要構造を獲得しているといえる。
では、『ボヘミアン・ラプソディ』は、どのようにして、この魅力的な需要構造を獲得したのか。
その問いに対して私は、「だってクイーンは『元祖Jポップ』だから」と答えたいと思う。
なぜ若者がもう一度見たくなる映画になりえたのか
この映画の魅力として、まず、ルックスや身なり、演奏シーンでの動き方まで、メンバー本人に酷似させたキャスティングなど、映画全体を支配する抜群のリアリティがある。
一方でリアリティに反して、史実を単純化しながら、起伏を持たせたストーリーも大きな魅力だった。
しかし、クイーンをよく知らない20代の若者が、繰り返し何度も見たくなったことに関しては、さらに別の理由があったのではないか。
ここで私が指摘したいもう一つの魅力は、クイーンが生み出すサウンドそのものである。あのクイーン・サウンドこそが、クイーンを知らない若年層をも惹き付け、そして、あの音の世界・音の洪水にまた溺れたいと思わせた。そうして、「若年層需要」と「リピート需要」が一挙に獲得できたと考えるのだ。
歴史を振り返る。そもそも70年代中盤から80年代初頭にかけて、クイーンは「日本で最も人気のある洋楽バンド」だった。
次に示すのは、当時の日本における代表的な洋楽ロック雑誌『MUSIC LIFE』における人気投票=「ML人気投票」のグループ部門のベスト3結果の抜粋である。
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