「ボヘミアン・ラプソディ」なぜ若者に人気? 「元祖Jポップ」としてのクイーンの魅力

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圧倒的な結果と言っていいだろう。雑誌『MUSIC LIFE』と言えば当時、女の子寄り・ミーハー寄りのイメージがあったが、当時の編集長=東郷かおる子氏は「読者層は6:4で男性の方が多かった」と『ミュージック・ライフ完全読本』でも語っている。ルックスだけでなく、サウンドもしっかりと評価されたと考えるべきだろう(当時、ルックスで人気だったベイ・シティ・ローラーズはベスト5にすら一度も入っていない)。

1985年7月13日の「LIVE AID」のパフォーマンスは今でも語り継がれる。フレディ・マーキュリーは1991年11月24日に死去した(写真:Photoshot/アフロ)

では、クイーン・サウンドの魅力は何だったのか。

『MUSIC LIFE』へのアンチとしての硬派系ロック雑誌『ロッキング・オン』を立ち上げた渋谷陽一によれば、「音が建築工学的で厚みがある」こと(日本人は「サウンド貧乏」で「スカスカした音だと落ち着かなくなってくる」から「ギッシリと音が埋まっていないと駄目」)と、「メロディーの明快さ」(だから「聴衆との合唱がよく起きる」)を自著の中で挙げている(『ロックミュージック進化論』日本放送出版協会)。

これに私が付け加えたいのは「ドラマティックな構成」だ。映画でもフィーチャーされた「ボヘミアン・ラプソディ」「愛にすべてを(Somebody to Love)」のように、一曲通して聴くとお腹いっぱいになるような過剰なドラマ性を持つことも、クイーン・サウンドの特筆すべき魅力だと思う。

そして、ここで思うのである――「クイーン・サウンドの魅力って、なんてJポップ的なんだろう」。

元祖Jポップとしての特性

隙間なく音が詰まったアレンジによる「音の厚み」、思わずカラオケで歌いたくなる「メロディーの明快さ」、それでいて、AメロからDメロ、Eメロまで、サビから大サビまで、たくさんのメロディーが詰まっている「ドラマティックな構成」など、これらはまさに、平成時代初頭に確立したジャンル=Jポップの特性である。

細かく見れば、「音の厚み」は管楽器・弦楽器がぎっしり詰まった昭和歌謡から引き継がれたもので、「メロディーの明快さ」は1990年代のカラオケボックスの浸透が背景にある。また「ドラマティックな構成」も同様にカラオケ需要に加え、長尺が収録できるCDシングルの普及と関連したものだ。そしてそんな音の上に「翼広げすぎ・瞳閉じすぎ・君の名を呼びすぎ……」な歌詞が乗る(余談だが、クイーンには「Spread Your Wings」という曲がある)。

そういうJポップの浸透と裏腹に、簡素な編成の弾き語りや、スリーコードのロックンロール、3分台で終わる楽曲などが、チャートから淘汰されていくのだが。

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