東海テレビ「ドキュメンタリー映画」への執念 プロデューサー&監督に聞いた「続ける理由」
齊藤:亡くなられたお母さんが、息子の奥西さんに送った手紙など、たくさんの資料を読んでしまったのが大きいかもしれません。
それと「司法シリーズ」といっていますが、裁判官や検事に密着した『裁判長のお弁当』や『検事のふろしき』といった番組の取材をする中で、裁判官は独立した存在でありながらも司法という「村」社会にいることがわかってきた。そういう蓄積に加えて、何十年も経て新たな証拠が見つかる。それぐらい疑わしい事件だということでもあるんですよ。
阿武野:つまり「終わらない事件」なんですよ。早く終わらせたい人たちはたくさんいるのですが。
──ということは、今回の作品で完結というわけではない?
齊藤:奥西さんが亡くなったところでピリオドを打とうと思いましたが、妹さんが再審請求を続けておられるので、粘り強くつくりたいですね。ここまできたら意地もありますよ。
本当に悪者なのか確かめたい
――なぜこうした独特な人たちを取材対象に選ぶのでしょうか。
齊藤:日の当たっている人はどのマスコミも取材しますが、日の当たらない人こそ見てみたいというのがあります。バッシングを受けている人だけど、本当に言われるような悪者なんだろうか、それを見てみたい。
──そういう対象者を取材する際、距離感が難しいと思うのですが。
齊藤:僕も戸塚さんのことを最初、怖い人だと思っていました。阿武野と取材交渉に行ったときに、何かあったら殴られるかもしれないと、不安を抱きながら対面したら、あれは何ジュースを頼んだんでしたっけ?
阿武野:クリームソーダ。喫茶店に入って僕ら2人はコーヒーと言ったあとに、「僕はクリームソーダ」って(笑)。ブラックコーヒーを飲みそうなイメージだったのに違った。
齊藤:そこで、この人も人間じゃないかと思った。この人を密着してしっかり見てみたい。より強く思いましたね。
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