樹木希林さんは、あれからどこへ行ったのか

私たちは感情を鈍化させて大人を生きている

「大切な誰か」は、今どこにいるでしょうか(イラスト:Masami Ushikubo)
『家族無計画』『りこんのこども』など家族に関する珠玉のエッセイを生み出してきたエッセイストの紫原明子さん。この連載でつづるのは、紫原さんが見てきたさまざまな家族の風景と、その記憶の中にある食べ物について。紆余曲折あった、でもどこにでもいる大人たちの過去、現在、そして未来を見つめる物語です。

「お母さん、もう帰ろう」

先日、何げなくつけたテレビで、樹木希林さんの追悼特集が放送されていた。特集の中では若き日の希林さんが、まだ小学生と思しき一人娘の也哉子さんと、2人でエジプトを旅する過去の番組の映像を映していた。

紫原明子さんによる新連載。この連載の一覧はこちら

ピラミッドの前に立った希林さんは、一度全体を見渡してから、おもむろに目の前にある、大きくて平らな石の上に横になり、それからゆっくりと、何かを感じ取ろうとするかのように目を閉じた。

すると急に、隣にいた也哉子さんが、慌てた様子で希林さんを揺すった。「お母さん、もう帰ろう」と、懇願している。

私はこの也哉子さんの言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる思いがした。なぜなら、彼女の口調があまりにも切実さに満ちていたからだ。まるで、今にも遠くに連れ去られてしまいそうなお母さんを、なんとかこの場につなぎ止めようとする、必死で、悲痛な訴えのように聞こえた。

得体の知れない深い闇のような不安が、彼女の側にはいつも息を潜めていて、ふとしたとき、今みたいにその姿を現しては、彼女を怯えさせてきたのかもしれない。そんなことを思わずにはいられなかった。

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成長を確実にする組織の根幹を成すのが、研究開発と人事である。研究開発体制は2015年4月、各研究所に横串を通し、顧客起点の組織に生まれ変わらせた。人事制度もグローバル化がほぼ完了。踊り場から飛躍へ、日立の地固めの様相を追う。