大人が思うより子どもには世界が見えている

亡くなった母が遺した「告白文」に息子は…

息子の家庭教師になった青年の、意外な過去とは……(イラスト:Masami Ushikubo)

カイがうちに初めてやってきたとき、私は、彼についてほとんど何も知らなかった。

紫原明子さんによる新連載。この連載の一覧はこちら

彼が大学院を休学中の22歳であることと、亡くなった祖父は作家だったらしいこと。カイについての情報は、ほとんどこれだけ。

祖父の名前を尋ねたこともあったはずだが、読んだことがなかったのですぐに頭から抜けてしまった。素性もよくわからないうえに、かなり長身でガタイの良い青年を、よくやすやすと家族で暮らす自宅に招き入れたなあと思う。

「今どきの若者」は仮の姿?

カイとは、イベントや仕事の場で、何度か続けて顔を合わせたことをきっかけに話をするようになった。だいたいいつも、ヨレヨレの汚いTシャツと、気の抜けたジャージか半ズボンをはいている。

会うなり、「昨日は酒場で飲みすぎたんすよ。道路で寝てて、起きたらTシャツがビリビリに破れてた」とか「大学院、どうすっかな〜。勉強って、ちょっともう飽きちゃったんすよね」とか「女の子が……<省略>」とか。多くの人が“今どきの若者”と聞いて連想しそうなことばかりよく話す。

けれども、よくよく観察すると、そこに妙な違和感がある。どことなく「コスプレ」みたいにそういうことをしているようにも見えるのだ。いずれにしても、ちょっとえたいの知れない人物だった。

ところが不思議なことに、そんなカイに私は、ふと思い立って「暇なら息子の勉強をみてくれない?」と頼んでしまったのだ。すると彼は「全然いいっすよ」と二つ返事で快諾。そんな経緯で、息子の家庭教師をやってもらうことが決まった。

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