●「コンサル・調査」、「人材・教育」、「流通・小売」を除く全業界で減少傾向
中小・中堅企業にとってはチャンスの年だが
企業側に採用の増減を聞いた「採用意欲」については、中期的と2010年春の2種類の調査が行われている。まず、中期的な採用意欲については増加傾向から維持傾向に変化が見られるが、その中身は「事務系職種が減少」が顕著で「技術系職種が増加」となっている傾向が鮮明だ。
次に16の業種別で見てみると、中期的な計画のもとでの「増加−減少」でプラスポイントを示した業種。つまり、中期的に採用意欲の高い業界は「化粧・医薬品」、「エネルギー・運輸・物流」、「コンサル・調査」、「人材・教育」、「情報・通信」、「サービス」、「流通・小売」の7業界。しかし、2010年春の新卒採用に限ると、16業界のうち7業界あった「増加−減少」のプラスポイント業界が3業界に半減しており、採用計画は完全に「減少」に転じていることが分かる。
なかでも20ポイント以上の大幅な減少を示す業界は、「輸送機器」、「化粧・医薬品」、「金融」、「商社」、「マスコミ」の5つの業界。
中期的な計画では増加傾向にある「化粧・医薬品」が、2010年春の新卒採用に限っては大幅な減少を示す理由として考えられるのは、製薬業界や医薬品販売の業界で言われている「2010年問題」。つまり、薬学部が6年制へ移行した影響で2010年から2年間にわたって薬学部の卒業生が不在となり、薬剤師資格を持つ新卒学生を採用できない。このような特殊な事情を除けば、「輸送機器」、「金融」、「商社」、「マスコミ」の4つの業界が採用数激減業界。いずれも学生の就職人気の高い業界であることは一目瞭然だ。
次に注目したいのは、エン・ジャパンが行った調査の狙いはさて置いて、2010年春の新卒採用に関する調査でのリクルートの調査との違いは、「わからない」という選択肢がないことである。
「増加」「前年並み」「減少」の三つの選択肢で聞いた2010年春の新卒採用計画は、20.9%の企業が減少を選択、「増加−減少」もマイナスポイントを示した。また、「わからない」という選択肢を設けなかったエン・ジャパンの調査では、企業の属性を示すカテゴリー別で最も従業員規模が大きい「1,000人以上」に属する企業の「減少する」との回答割合が27.5%とすべての規模別で最大となったことも見逃せない。
この結果は、調査の選択肢項目の差はあるが、最も大きい従業員規模での傾向ということでは、リクルートの調査と同様の傾向にある。
2006年から続いてきた学生の売り手市場、その中でも採用意欲にあふれる中堅・中小企業を悩ませてきたのは、学生の大手志向と人気業界志向だった。しかし、就職情報業界大手2社が直近で行った調査を見てみると、大手企業と人気業界の2010年春の新卒採用意欲(学生選別意欲)は、相当に厳しいものになることは間違いない。長期的に見れば、日本の労働市場は先細りが避けられない。無論、採用できる企業体力が優先されるべきだが、2010年春は中小・中堅企業が将来の幹部候補生を採用するには滅多にないチャンスの年であることは間違いない。
故に、そうした中小・中堅企業が採用活動に取り組みやすいような環境整備が必要だ。景気後退の最中、大手・有名企業が“わからない”状態で取り組む早期からの採用活動に学生は翻弄、目移りするのはある意味仕方がない。視野を広げ、学生・企業の協同作業として意識しなければミスマッチは減るはずはない。あらためて日本経団連による全体的な方針策定(倫理憲章の変更)が必要ではないだろうか。
採用プロドットコム株式会社
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
採用担当者のための専門サイト「採用プロ.com」を運営。新卒、中途、派遣、アルバイトなどの採用活動に役立つニュース、情報、ノウハウを提供している。
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