家族や友人と顔を合わせて話をする頻度を聞くと、米英では約50~70%の人が「週に数回は話す」と答えたのに対し、日本では10~20%台と格段に低かったのにもかかわらず、孤独感や孤立感を感じている人は日本では9%とアメリカ22%、イギリスの23%より低かった。日本人の「我慢強さ」が影響している可能性があるが、そのうち、10年以上孤独を感じている人の割合は35%と、アメリカ22%、イギリス20%より断然、高かった。引きこもりの長期化などと軌を一にしている可能性もある。
もう1つ特徴的だったのが、男女の孤独格差だ。アメリカは女性が54%対男性46%、イギリスは女性が55%対男性45%と、どちらも女性が多かったのに対し、日本は唯一、男性が54%に対し、女性が46%と、男性のほうが多かった。孤独はどこの国でも男女共が直面する課題であるが、とくに男性にとって厳しい現実になりやすい、というのは日本独特の傾向といえる。
女性はどんどん「外向き」になる
高齢者などを見るとこの傾向は顕著で、集会所でも、街中でも、おばちゃん軍団は元気でパワフルに社交を楽しんでおり、夫との死別後はますます意気軒昂という人も少なくない。そうしたご婦人方に「ご主人は」と尋ねると、たいてい「亡くなった」「家にいる」「たまに図書館に行く」という答えが返ってくる。
年を経るごとに男性は、「内向き」の力が働きがちになる一方で、女性は遠心力が働くように、どんどんと「外向き」になり、つながっていく印象がある。こうした傾向について、男性更年期など「メンズヘルス」に詳しい順天堂大学の堀江重郎教授は女性セブンで、「(男性は)獲物を追い、自分を認めてもらい、獲物を仲間に与えることで男性ホルモンは活性化する。狩りは、今の社会で言えば“仕事”。引退後、その狩りをしなくなると男性ホルモンの分泌は減少し、意欲と筋力が低下し、いつも家にいる」「女性ホルモンは自分の周囲をケアするように働くが、閉経により減少すると、もともと持っていた男性ホルモンが優位になり、外へと目が向く。閉経後の女性はどんどん外出し、社交的に振る舞うように設計されている」といった趣旨の解説をしている。
まさに内向き、外向き説はホルモンによっても説明できるということのようだ。これ以外にも、「オジサンの孤独」には社会的、文化的、生物学的なさまざまな要因が絡み合うが、中高年男性を孤独に向かわせる1つの価値観に、冒頭に挙げた「恥」というものがあるように思う。
恥についての論考はアメリカの人類学者ルース・ベネディクトの『菊と刀』が有名だ。ベネディクトはキリスト教的な価値観に基づき、自分の内面に善悪の絶対の基準を持つ西洋の「罪の文化」に対し、他者からの評価を基準として行動が律されている「恥の文化」を対比させた。要するに「自分の良心に照らして、それが正しければ、ほかからどう見られようと気にしない」という西洋の価値観に対して、「他人や世間からどう見られるのか」ということを極度に気にし、それによって行動を制するのが日本の流儀ということになる。
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