新日鉄住金が買った大赤字工場の価値 なぜ1550億円で独大手の北米拠点を取得したのか
ところが、2008年のリーマンショックをきっかけに、米国をはじめとした先進国の鉄鋼需要は激減。その一方で、中国では新規の高炉(溶鉱炉)が次々と稼働を始めた。世界の需給バランスは一気に崩れ、ティッセンは生産した鋼材の需要先探しに苦労する。結果的に、ブラジルで半製品を作り、米国で加工するというスキームは破綻を来たした。ティッセンは2012年秋頃から工場売却の検討に入ったという。
“渡りに船”の売却話
そんな赤字工場を引き継ぐことになった、新日鉄住金とミタル。冒頭の幹部コメントのように、立て直しに自信を見せる理由は何か。
新日鉄住金とミタルは、米国中西部のインディアナ州で自動車用鋼板工場を2社、20年以上前から合弁で展開しており、トヨタやホンダといった日系自動車メーカーを大口顧客に抱えている。すでに販売先にはメドが付いているので、ティッセンのように最新鋭の設備を持て余すこともない、というわけだ。
追い風も吹いている。米国における自動車販売台数は回復基調にあり、日系自動車メーカーも盛んに生産能力の増強に動いている。既存の合弁2社を併せた加工能力は年間約200万トンに上るが、自動車の増産ペースに追いつくには無理が出ていた。ティッセンの北米工場売却は、まさに渡りに船だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら