新日鉄住金が買った大赤字工場の価値 なぜ1550億円で独大手の北米拠点を取得したのか

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北米工場の年間生産量は、歩留まりも考慮するとおよそ400万トン超。半分を自動車向けに、残り半分をエネルギー業界向けに振り分ける計画だという。このうち、自動車向けの半製品については、すでに既存顧客向けに実績のあるミタルの米国工場から調達する。

そのため、「自動車メーカーによる認証作業は、ゼロからスタートするのに比べてかなり短期で済むようだ」(業界関係者)。野村証券の松本裕司アナリストは「年間加工能力140万トンの溶融亜鉛メッキ工程を新設するだけでも1000億円はかかる。前後工程の設備も含めると、買収したほうが新設するよりかなり少額で済むだろう」と評価する。

次のステップに移れるか

新日鉄住金は今年3月に発表した中期経営計画の中で、国内の生産工程の合理化や経営統合によるシナジーで年間2000億円のコスト削減を見込むとしている。その一方、タイやメキシコ、インドネシア等では、加工能力の強化を進めてきた。特に2013年度は新設備が続々と立ち上がり、合弁を含めた海外の加工能力は1400万トンと前年度から5割増える見通しだ。

今回の北米工場買収は、鉄鋼需要が伸び悩む国内で加工能力をスリム化する傍ら、需要の旺盛な海外では加工能力を拡大させるという、世界戦略の一環にほかならない。事業構造をいち早く筋肉質なものにし、規模の拡大という次なるステップに移ることができるか。北米工場の黒字化が試金石となる。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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