新日鉄住金が買った大赤字工場の価値

なぜ1550億円で独大手の北米拠点を取得したのか

ティッセン・クルップ北米工場は最新鋭の設備がそろっている

「買収した北米工場は2016年3月期までには黒字化できる」――新日鉄住金の幹部はそう断言する。

彼の言う北米工場とは、ドイツの鉄鋼大手、ティッセン・クルップが2010年に稼働させた米国南部アラバマ州の鋼板工場を指す。新日鉄住金は、世界最大手の鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)と15.5億ドル(約1550億円)を折半出資し、2014年中頃までに取得することで合意した。

新日鉄住金とミタルが買収を決めたこの工場は、熱延工程(年間加工能力530万トン)、酸洗・冷延工程(同250万トン)、溶融亜鉛メッキ工程(同140万トン)など、自動車用鋼板の製造に必要な一連の加工能力を有している。だが、この米国工場にブラジルの製鉄所を加えたティッセンの米州事業は、直近の3年間累計で90.72億ユーロ(約1.2兆円)という巨額のEBIT(支払利息・税金控除前)損失を計上している。

リーマンショックでスキームが破綻

なぜ、これほどまでの巨額赤字を垂れ流すことになったのか。ティッセンが北南米での積極投資を決断したのは2006年から2007年にかけて。当時は、中国で鉄鋼需要が爆発的に伸び、世界全体で年率8%前後の生産拡大が続いた。

ティッセンは、世界有数の鉄鉱石産出国であるブラジルの製鉄所で半製品を作り、自動車向けなど高級鋼の需要が多い米国やドイツへ輸出し、最終消費地で最終製品に加工することでコストを削減するという絵を描いていた。ブラジルと米国における設備投資の総額は、当時の為替レートで1兆円近くに上った。

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