「変われない日本」がAIでも同じことを繰り返す懸念
中原圭介(以下、中原):日本は、少子化にしても1989年の「1.57ショック」で30年も前から騒いでいたのに、いまだに抜本的な対策は取られていないし、財政にしてもプライマリーバランスを黒字化するという約束も先送りを繰り返しています。結局は、AIに関連するイノベーションに沿った人材教育でも制度的に遅れて、前回、大久保さんがおっしゃったように「悪魔のシナリオ」になってしまうかもしれませんね。
大久保幸夫(以下、大久保):日本は変わるのが大変ですよね。バブル崩壊後、あれだけ日本は変わると言われましたが、実際、あまり変わっていません。「日本的雇用慣行はダメだ」「グローバル社会に合わせた雇用制度に変えなければ」と言っていたにもかかわらず、その後も何だかんだ言って日本的雇用は続いています。今後のAIの問題を考えた場合、同じことが繰り返されるのではという危惧はありますね。
中原:日本が変わるのが大変なのは、歴代政権がすぐに恩恵が実感できるバラマキ的な政策を優先し、国家を左右する深刻な問題に関しては真剣に取り組もうとしてこなかったからです。そのような背景には、日本が他の先進国と比べて国政選挙が多いということがあると思います。2017年までの過去10年間で、アメリカの大統領・議会選は5回、イギリスやドイツの議会選は3回、フランスの大統領・議会選は2回であったのに対して、日本の衆参両院の国政選挙は7回も行われているのです。
選挙と選挙のあいだの期間が短いと、どうしても選挙公約は近視眼的な政策、ばらまき的な政策になりがちとなってしまいます。長期的な展望に基づいた改革は選挙の票にはならないので、先送りが繰り返されるのはやむをえないということになります。選挙は民主主義のもとで国民の声を吸い上げる重要な機会であり、本来であればそれが多いことは好ましいことなのかもしれませんが、近年は選挙のたびに民主主義が劣化していっているように感じています。