ケヴィン・ケリー、「人工知能の未来」を語る 人に残される仕事とはいったい何なのか?
未来に対する悲観的な見方が多すぎる
――なぜこのタイミングで未来の技術について書こうと思ったのですか。今がまさに著書にもあるように未来の「beginning of beginning(始まりの始まり)」ということでしょうか。
部分的に書き始めたのは10年ほど前で、アップデートしたり書き直したりしてようやく本になったのが今だった。本自体は今後30年間について書いているので、出版が昨年だろうが今年だろうが大きな違いはなかったが、いろいろことがかなりのスピードで起きているのは確かだ。
「始まり」という観点で言えば、どの年も(未来の)始まりではある。つまり、これから未来に進むにつれ、もっともっと新しいものが出てきて、昨年より今年、今年より来年のほうが私たちはより多くのチャンスに恵まれることになる。
そもそもこの本を書いたのは、多くの人が未来に対して恐怖感を抱いていると感じたからだ。そういう映画も多いし、ハイテク業界にはAIの脅威について語る人も少なくない。iPhoneのロック解除をめぐる米政府とアップルの争いをみて、トラッキングされることに嫌悪感を抱いた人もいるだろう。多くの人が未来を悲観しているからこそ、楽観的かつ違う見方を提示したいと思ったんだ。