ケヴィン・ケリー、「人工知能の未来」を語る 人に残される仕事とはいったい何なのか?

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このバージョンを信じている人は、2045年にシンギュラリティが起これば「不死」になると考えていて、一生懸命サプリや薬を飲んでそこまで生き延びようとしている。

私が、ハードバージョンが間違っていると思う理由のひとつは、人間より優れた知能を持つものが出てくるというコンセプト自体に本質的な問題があることだ。人間の知能はIQだけでなく、複数の要素から構成されている。人間のIQが100で、AIのIQが105だからといって、AIのほうが、知能が高いとは言えない。

知能について何も知らないも同然だ

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人間の知能は、演繹的推論や空間的推論、感情的知能指数(EQ)、象徴概念などさまざまな要素から成り立っており、音楽で言えば、いろいろな楽器がそれぞれ違う曲を演奏しているようなものだ。しかもそれは、人によってそれぞれ異なる。

今でもすでに電卓やGPSは人間よりスマートだが、それはある特定の分野に限っての話だ。これからも人よりスマートなものはたくさん出現するだろうが、人間のようにすべての知能がセットになった存在が出てくることはない。人間の知能はそれぞれで異なり、人の数だけ違う知能が存在する。実際のところ、私たちは知能とはいったい何かということについて知らないも同然だ。

――知能についての研究が必要ですね。

知能を測る何らかの科学的測量が必要だろう。AIは人間とは違う発想をするので、知能に対する別のアプローチを考えることができ、それを基に科学的測量法を考えつくことができるのではないか。人間の知能を知るには、これまでとはまったく別の発想やアプローチ、知能が必要だ。AIの最大の利点は、人間の知能とはいったい何なのかをようやく究明できるようになることだ。人間の脳で実験をすることは容易ではないが、人工の脳を使っていろいろな実験ができる。

――それによってようやく人間が何に秀でているかわかるようになると。

ただそれには何世紀もの時間がかかるだろう。私たちの脳が発達するのに40億年もかかったことを考えると、20年やそこらで究明できるとは思えない。

(後編に続く)

(撮影:今井康一)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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