中原:日本人は欧米人なんかと比べると諦めが早いというか、あきらめることで割り切っているという節があります。内閣府が毎年公表する「国民生活に関する世論調査」では、2017年に「満足」と「まあ満足」を合わせた人の割合は73.9%と過去最高の満足度を記録したのです。どのメディアの世論調査でも、景気回復を実感していないと答える割合が80%前後になるということを考えれば、現実が決してよくなったのではなく、満足する水準を自ら引き下げている、あるいは、そもそもあまり期待をしていないと捉えるのが妥当ではないかと思うのです。
大久保:大きな期待を持たないですよね。期待値の調整がうますぎるんですね。
AIの話に戻しますが、AIが浸透したときに、どういう能力が求められるのかということをよく聞かれますが、細かいスキルの話もありますけれども、いちばん大切なことは変化を楽しめるかどうかだと思っています。自分の仕事はAIに取って代わられて、自分は失職するかもしれないというふうに考えることが、最も危険な考え方です。
AIが出てきたときに、どのようにAIと良好な関係を作れるか、わかりやすく言えば、AIを使ってラクをしようとか、AIを使って自分が楽しもうと考えることが大切です。
AIのおかげで人生を楽しめる要素がぐんと増えるはず
中原:ほかの人たちはどうかわからないのですが、自分の経験談を申し上げると、一生懸命に1つの仕事に打ち込んでいたら、10年以上も経てばそれまでの情熱が冷めてくるというか、何か新しい仕事を一から始めたいという衝動に駆られてくると思います。だから本当にここ数年は、仕事を楽しんでいるというよりも、使命感だけでやっているという気がします(笑)。
今の仕事を始めて10年過ぎぐらいまでは、仕事が楽しくて楽しくて仕方なかったのですが、自分が目標としていたレベルまでやり切ってしまったので、違う仕事をしたいと思うのは、むしろ人としては自然な気持ちの流れなのではないでしょうか。これからの社会では、仕事を一生懸命に前向きにやれば、おそらく、また次の新しい仕事に挑戦するというように、うまく切り替えができてくるのではないかと思っています。
大久保:僕も基本的に飽きっぽいのでよくわかりますが、確かに飽きますよね。仕事に限らず自分自身の趣味や興味というのも、やっぱり衰退していきます。
しかし、そうしたらまた次のものに興味を移すというようにトランジットしていくのが、人生だと思っています。それはキャリアについてもそうですし、趣味の世界でも同じです。
AIの社会では、いろいろなものが手助けしてくれる社会になる。趣味だって昔はすごく長い時間をかけないと形にならなかったことが、現在ではいろいろなツールもあるし、ICTもテクノロジーもあるので、2年、3年もやれば、何十年もやっている人のレベルに到達できてしまう。だからこそ早く飽きるし、いろいろなものが楽しめる。限られた人生の中で楽しめる要素が増えるわけですから、ポジティブに考えるべきではないでしょうか。
中原:変化の時代を楽しむことができる若者が増えれば、日本の未来も決して暗くないということですね。ありがとうございました。
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