中原:どうしたらうまく世代間のバトンタッチができるのでしょうか。
大久保:「2030年の未来予測プロジェクト」に参加していた頃に、当時の後輩から次のように言われました。「先輩たちは中継ぎの世代です。先輩たちがトップリーダーになるのではなく、私たちのような若い世代に、中抜きでバトンタッチしてください」と言われたのです。「ああ、確かにそうかもしれないな」と、当時、妙に納得した記憶があります。
明治維新の時に世代が飛んだように、ひと世代、ふた世代飛ぶことによって大きな変化は成し遂げられる。ですから、AIが本格的に立ち上がる時代も、思いきり若い世代に権限を渡してしまったほうがよいのかもしれません。
AIを使いこなせる若い人が絶対にリーダーになるべき
中原:日本にはどういった若いリーダーが求められていると考えていますか。
大久保:まだわからない面が多いですが、本当にAIが社会のあらゆる領域に入り込んでくるのだとしたら、政治でも企業経営でも、AIと良い関係=パートナーシップを組んで、AIを使いこなせる人が絶対にリーダーになるべきだと思います。
中原:そういったリーダーを日本は生み出すことができるのでしょうか。あるいは育成することができるのでしょうか。
大久保:育成というのは難しいですよね。変革期のリーダーにふさわしい人物を育てるのは無理でしょう。これは私の基本的な考え方ですが、人材というものは誰かが意図的に育成するものではなく、もともと成長する潜在パワーを持っている人を開花させるような環境を用意することです。ですから、そういう人たちが出てきた場合、年長者たちが邪魔をしないで、いかに支援をしていくかに尽きるでしょう。
中原:国内では昨年、滋賀大学がデータサイエンス学部を初めて創り、今年に入って広島大学と横浜市立大学も同じような学部を創りましたが、これらから全国に一段と広がっていくのかと思いきや、そのような動きは止まってしまったようにも見えます。学部の新設が難しいという言い訳は、経済のデジタル化が進むなかでありえません。