だが、いったんそのムードに入ることができれば、豪華キャストによる華麗な陰謀の一部始終を、障子の隙間から覗いている気分になれる。息が止まりそうになるエピソードが次々と紹介されるが、その中でも、藤原道隆の娘、定子が出ている巻はやはり心を奪われる何かがある。
清少納言が描く聡明で、かわいくて、笑顔と幸せに満ちあふれている定子とはまるで別人で、絶えず涙を流しているそのもろさと壮絶な人生に思わずウルッとくる。
バカな兄のせいで出家することに
定子の没落は父・道隆の突然の死に始まり、状況は兄・伊周(これちか)が、先代の天皇である花山院に矢を射ってしまうことで悪化。出家した花山院が自分の女に手を出しているんじゃないかと疑った伊周が、弟隆家と組んでやっつけようとするわけだが、実は院の相手が別の女だったというアホなオチが待っていた。
内大臣にもなり、イケメンとしても政治家としても名を馳せた伊周だが、隆家とのやり取りだけを見るとまるで漫才コンビのようで、カッコつかない。花山院のケガは大事に至らなかったが、誤解に気づいた伊周は真っ青になったであろう。
そして、伊周をうとましく思っていた叔父の道長がその事件のうわさに飛びついてもっと大きくした結果、伊周と隆家は流罪に。2人を逮捕すべく当時の警察である検非違使がわんさと屋敷内に入ってくる中、その様子を目撃した定子はその場で髪の毛を自ら切り落し、妊娠中にもかかわらず即出家。もうなんというか、ドラマチック!!! それを知った夫の一条天皇はびっくり仰天。
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