「情熱の恋」を貫く人は不幸になりやすいのか 「栄花物語」に見る情熱派vs.戦略派対決

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返歌があってこそ恋愛が成就するという世界で詠んだ歌は…(写真:やまぼうし / PIXTA)

「生涯未婚率」というのは50歳まで一度も結婚したことない人の割合を示すらしい。5年に1回、国立社会保障・人口問題研究所がその恐ろしい数値を発表するのだが、絶賛上昇中だそうだ。しかし、その中にはマイウェイを突っ走っている人もいれば、恋愛市場の落ちこぼれや、気まぐれのロマンスに捕らえられて苦しんでいる人もいるはずだ。美しい恋が突然やってくるという固定観念に固執するあまり、相手をゲットするチャンスを自ら狭めている人たちである。

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18世紀後半以降ヨーロッパにおいて広まり、1960年代に日本にやってきたいわゆるロマンチックラブ至上主義というやつがその悪循環の病巣だと思われる。人生でたった一度訪れる情熱の嵐という幻想を抱き始めたが最後、そりゃもう妥協できない、というわけだ。

しかし、歴史的に見れば、イタリアのようにアモーレが重んじられてきた国ですら、ロマンチックラブが主流になったのはごく最近のことだ。日本ではなおさら日が浅く、むしろ真逆のロジックに基づいた価値観のほうが長らく主流だった。

「身分違いの恋」にキュンキュンなるけれど

平安時代のバイブルこと『源氏物語』にもそれらしきことが冒頭に書かれている。

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。〔…〕朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよあかずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえ憚らせ給はず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり。
【イザ流圧倒的意訳】
いつの帝のときだったか、たくさん仕えていた女御や更衣の中で身分が別に高くもなんでもないのに、生意気にも帝の寵愛を独り占めしている人がいた。〔…〕朝夕の宮仕えでその女性の行動は人を動揺させ、積もりに積もった嫉妬のせいなのか、病気がちになり、心細く実家に帰ることが多くなった。それを見た帝はますますゾッコン、周りの忠告に聞く耳を持たず悪例として歴史に残りそうな特別待遇を続けていた。

しょっぱなから「身分違いの恋」という永遠のテーマが出てくるので、現代人はキュンキュンモードになるけれど、色気全開時代を生きた平安人の心で読むと悲劇のにおいがぷんぷんする。なるべく多くの女性を愛し、子孫をたくさん残すというのが帝の唯一の務めだったので、1人の女性が独占しようとするなんてありえないからだ。

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