本当に記録はないのか? ハードル高い”消えた年金”の復活

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記録漏れなのか 未加入・未納だったのか

会社が厚生年金の適用事業所であっても、会社の手続きミスか社会保険事務所のミスによって、申立人が被保険者になっていないことがある。そこで本人は保険料は控除されていた(保険料が天引きされていた)と申し立てることになる。

さらに、そもそも適用事業所でないが、本人が保険料が控除されていたと申し立てるケースがある。本当は適用事業所であるのに、仮に社会保険事務所のミスか改ざんによって、非適用事業所となっていれば、こうしたケースもありうる。

保険料が控除されていないことがはっきりするケースもあるが、最終的に、「保険料の控除の有無については不明だが、申し立てを却下(非あっせん)」となる事案があるのだ。つまり、第三者委員会としては、「保険料を払ったかもしれないが、そうでないかもしれない。だが払ったという決め手がないので却下」ということだ。東京での非あっせん事例75件のうち、41件はこうしたいわば「グレー判定」に当たる(図1の赤と青の棒グラフ)。

ある地方第三者委員は言う。「今は判断がつきやすいものから結論を出している。本人の記憶しか証拠がなく、委員会でもそれを否定するだけの確たる証拠が見つけられない案件は後回しだ。今後は、結論を無理やり出していくので、グレー判定はもっと多くなるだろう」。

第三者委員会に申し立てる人の一番の願いは、漏れた記録の復活だ。これがかなわないのであれば、本当に記録が消えたのか、そもそも未加入で保険料も納めていなかったのか、白黒ハッキリつけてほしい。これが、第二の願いであろう。

公表されている判断理由だけでは、年金記録が消えたのか、未納・未加入だったのか、それがはっきりしない非あっせん事案が散見される。個人情報保護の問題もあろうが、少なくとも申立人には、それが実感できるだけの説明を行うのも、国民の立場に立った救済機関としての役割ではなかろうか。

第三者委員会がどんなに頑張っても判断のつかないグレーゾーンの事例はかなりの数に上るだろう。これらは、記録のずさんな管理や改ざん、従業員を厚生年金に加入させない会社を放置するといった不祥事のツケでもある。この責を取り、一定額を補償するといった救済策が必要であろう。そうでなければ、記録捜しに残りの人生を翻弄される“第二の年金記録被害者”が増えるばかりだ。


(週刊東洋経済)
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