「とみ田」のつけ麺が大つけ麺博で勝った意味 イベントが商業的すぎても名店は育たない

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大つけ麺博実行委員会の井上淳矢氏も「とみ田」が勝てた理由をこう分析する。

とみ田のつけ麺(筆者撮影)

「『とみ田』の『待たせない』『ほかより安い満足できるトッピング』『品質の徹底』が評価された理由だと思います。このイベントも3年ぐらい前までは、『並んでいるお店=おいしい』というふうに思われることが多く、あえてゆっくり作って行列を生み出すお店もありました。しかし、最近はグルメイベントが増え、お客さんが並ぶことを敬遠するようになっています。『とみ田』はそれにいち早く気づいて対策をしたということでしょうね」

喜びを語り合う富田氏と「頑者」大橋氏(筆者撮影)

大つけ麺博は「六厘舎」の店主・三田遼斉氏と実行委員会の井上氏との出会いから始まった。その「六厘舎」と「とみ田」「頑者」は第1回から参加している。「10年前は3店とも1ラーメン店でしたが、この10年でそれぞれの独自性を出して、それぞれ企業になりました」と実行委員会の井上氏は言う。

優勝した「とみ田」は、まさに大つけ麺博とともに育ち、東京から少し離れた千葉の松戸にありながら、途切れない行列をつくる名店となった。頑者や六厘舎なども同じくラーメンイベントの存在はファンを引きつけるだけでなく、お店を育てることにもつながっているのだ。

ただ、近年、ラーメンイベントが増えすぎているせいで、効率よくイベントをこなすために業務用スープを使うお店が増えている。業務用を否定するわけではないが、「少なくとも手を抜かずにお客さんが満足できるしっかりしたものを出すべき」だというのが富田氏の考えだ。ラーメンファンの1人である筆者からも、ラーメンイベントが商業的になりすぎてしまっているように見える。

過去最高の売り上げにつながった「やる気」と「思い」

対して、今回の大つけ麺博は「ラーメン日本一」を争う中で、業務用スープを使うお店は少なかった。普段は従業員にイベントを任せてしまう店主たちの中にも、今回は自ら厨房に入って味の管理を行っていたケースが多く見受けられた。

ラーメンは1ccのタレで味が変わる。店主自らが味を管理すればよりおいしいものが提供される。「こうしたやる気と思いが過去最高の売り上げにつながったのではないか」と実行委員会の井上氏は分析する。イベントがあまりに商業的になりすぎても名店は育たない。とみ田の圧倒的な高評価はそれを示唆しているように見受けられた。

井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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