「給料は安くていい」はとんでもない話
それから、再生中の企業でヒトの要素において意識しなくてはいけないのは、そもそも再生会社にキャッシュは少ないということです。社員が頑張っても十分に報いられる原資がないという悲しい現実です。世の中はカネではないというのは簡単ですが、実際にカネで買えるものが大部分である以上、やはりカネは重要です。
うちは仕事で報いているから給料は安くでもいいのだという議論もありますが、これもとんでもない話で、会社側の自己正当化以外の何物でもありません。精神論で従業員をこき使うというのはとても傲慢な発想です。成果を上げた人に対してはきちんと目に見える報いるべきです。
そうなると、そこでのポイントは人件費の原資を一定にして、その中での配分を傾斜させること。要するにできる人にはより厚く、そうでない人から持ってくるというメリハリの付け方が、まず現実的な優先順位になると思います。
さて、以上が企業再生における「ヒト」の問題になりますが、必ずしもこれらの問題を意識しながらマネジメントを行っている会社は決して多くないような気がします。なぜなら、後回しでもなんとかなってしまうのが「ヒト」の問題だからです。すぐに手をつけなくてもすぐに爆発したりはしません。内部に仕掛けられた時限爆弾のようなもので、いつの間にか導火線が短くなりその間は何事も変わらず、間に合わなくなってようやくその重大さに気づいたりします。
そもそも再生には時間がありません。時間との闘いの中で、すぐに何とかしなくても何とかなる「ヒト」の問題に取り組むのは容易なことではありません。見なかったことにして先送りできる「ヒト」の問題に、自分の意志で前倒しして取り組むこと。それこそがまさに上司の覚悟が問われているということだと思います。
※ 本文は筆者の個人的見解であり所属する組織・団体を代表するものではありません。
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