だからニコニコの有料記事に10万人が集った 雑誌系出版社の眼前に広がる“不都合な真実”
ただ、「300円払ってもらっていたものを400円に上げるよりも、0円を1円にするほうがはるかに難しい。ネットで流通しているモノにカネを払いたくない人はいっぱいいる」(ネットニュース編集者の中川淳一郎氏)のがネットの世界。ブロマガにせよ、メルマガにせよ、ネットを介して記事を読むことに、一定のおカネを払うユーザーを万単位で獲得することに成功していることは、雑誌を紙で発行している出版社にとって、憂うべき事態である。
スマートフォンの爆発的な普及により、「いつでもどこでも誰でも」ネットに接続できる環境が急速に整った。ネットの世界では、新聞社や通信社、出版社といった伝統的なメディアやネット専業メディア、個人によるブログのほかに、最近台頭しているまとめサイトなどの「記事」が氾濫。多種多様な情報が無料で得られるようになった。
こうした流れを受けて、紙媒体の販売部数と広告収入は縮小の一途をたどっている。紙の新聞の販売は宅配制度のおかげで何とか踏ん張りを見せている面もあるが、紙雑誌の販売減はきつい。出版科学研究所によれば2003年に1兆3222億円あった月刊・週刊誌の販売金額は、2012年に9385億円と、この10年で3割、実に4000億円もの市場が消失してしまっている。
雑誌系出版社は、電子書籍端末向けの電子雑誌の販売や、無料で読める自社サイトでの閲覧=ページビュー(PV)を集めることで広告収入を拡大しようとしているが、紙の落ち込みを補い切れない。コンテンツ課金は雑誌系出版社にとって大きなテーマだが、このテーマで成功といえるビジネスモデルを構築した例は、まだない。
「キャラの立つ個人」が不可欠
「電子コンテンツが課金でうまくいったのはメルマガだけ」とは、ブロガー藤沢氏の評。なぜ、メルマガやブロマガに有料読者が集まり、紙雑誌系ウェブマガジンの有料化が進まないのか。
そもそも雑誌(マガジン)とは、「雑多な事項を記載した書物」「複数の筆者が書き、定期的に刊行される出版物」を意味する。これがネットの発展により、記事の一つひとつ、筆者一人ひとりの発信する情報が切り分けられて閲覧できるようになった。こうした流れの中で、紙雑誌はパッケージ力が薄れてしまった一方、コンテンツ個々の力、発信者である個人の力が読者を集める要素になってきている。その現状は、iTunesで個別の楽曲が売られるようになって、アルバムCDが売れなくなった音楽業界に似ている。