プロ野球を選ばなかった男が歩んだ激動の道 小さな大投手・山中正竹は球界の第一人者に

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山中は2006年に初開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、アジア代表の技術委員をつとめた。ドラフト制度検討委員会の委員長、セントラル野球連盟理事長などを歴任したあと、2010年3月にベイスターズを離れた。同年4月、法政大学特任教授に就任している。

その後、2017年に全日本野球協会副会長、侍ジャパン強化本部長に就任。現在は、全日本野球協会会長をつとめている。

「監督や選手をどうやって選ぶのか、課題はたくさんあります。短期決戦で勝つためには、どんな監督がふさわしいのか。世界と戦うためにはどんな選手が必要なのか。有識者の意見も聞きながら、プロ側の担当者と委員で協議します。そういうプロセスを経て、『侍ジャパン』の監督は決まりました」

2020年の東京に向けて重要な使命を背負っている

2020年東京オリンピックに挑む侍ジャパンの監督に、稲葉篤紀が就任した。彼は、山中が法政大学で監督をつとめていた時代の教え子だ。

「稲葉は期待以上によくやってくれています。立派な監督になってきた。私は身内だからどうしても評価が厳しくなるのだけど……。プロに入ってから、野村克也さん、若松勉さん、トレイ・ヒルマンさん、梨田昌孝さん、栗山英樹さんなど、いい監督に仕えてきたことがいまの稲葉をつくったんだろうと思います。しっかりした彼の発言を聞くたびにそう感じます」

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2000年シドニー大会で、プロアマ合同チームを組みながら4位に終わった日本代表。プロ選手だけで臨んだ2004年アテネ大会は銅メダル、2008年北京大会は再び4位に。

ロンドン大会、リオ大会で野球は行われず、今回の東京大会が3大会ぶりの開催となる。過去の大会の結果を見ても、日本代表が容易に金メダルを獲れるとは思えない。

「2024年のパリ大会以降どうなるのかという大問題はありますが、いま大事なのは東京大会で金メダルを獲ること。

もちろん、簡単ではありません。でも、チャンスも可能性も十分にある。稲葉監督を中心とした侍ジャパンが、金メダルを獲るためにどんな戦いをするのか。重要な使命を背負っています」

同時に、東京大会でオリンピック競技に復帰したことを、野球界がどう生かすのかという大きな課題がある。山中はその舵取り役を担っている。

(文中敬称略)

元永 知宏 スポーツライター

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もとなが ともひろ / Tomohiro Motonaga

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。直近の著書は『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、同8月に『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)。19年11月に『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長。

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