アメリカが世界の「リスク」になった根本理由 トランプ大統領はアメリカをどう変えたか

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インターネットは当初、誰もが発信者になって連帯できるメディアとして受け入れられました。今も、「#MeToo」ムーブメントを可能にしているのはネットです。

他方、今回明らかになったのは、むしろ分断のメディアの面。自分の気に入らない記事、自分と異なる立場の意見は遠ざけ、自分が好む情報へ優先的にアクセスする仕組みになっている。虚構の世界に人々を閉じ込めていくメディアとして機能しています。

産業の基軸がITにシフトし、取り残された製造業の労働者たちが絶望している。彼らの生活が劣化していく、公共インフラが朽ちていく、アメリカ社会が掲げていた理想がみるみる崩れていく。

意図的に人種・女性差別発言

──アメリカンフットボールの選手が試合前の国歌斉唱時に片ひざを突く、人種差別への抗議行動がトランプ時代に一気に広がりました。ダワー氏は「アメフトを見ればアメリカという社会の本質がわかる」ともおっしゃってます。

吉見俊哉(よしみ しゅんや)/1957年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会学、文化研究、メディア研究を専攻。2004年から現職。同大学院情報学環長・学際情報学府長、同大副学長など歴任。東京大学出版会理事長。『都市のドラマトゥルギー』ほか著書多数(撮影:吉濱篤志)

アメフトはゲームの形が軍事的な要素で構成されていて、戦争に似ているんです。好戦的な内容の国歌を斉唱し、ナショナリズムをかき立てる。アメリカは基本的に軍事国家。国家の成り立ちにマスキュリニティ(男性性)というか、暴力性が内包されている。いざとなれば力ずくで相手をたたく。イラク戦争から今に至るまで、軍事力でなら勝てると、他者を顧みず暴走する。

トランプは意図的に人種・女性差別的な発言をします。対立をあおり亀裂を深めることによって、自分の味方の白人労働者階級や南部の保守層の結束を固め、権力を得ていく。「俺はホンネだけを言う」と、人々の心の底にある差別意識や保守的感情をかき立てる。そうやって支持者を増やしてきた。

──銃乱射事件も頻度・規模が増大してきています。

他者への恐怖心が、強固なまでの征服への固執に結び付く。白人社会が虐殺や虐待を重ねてきた他者、つまり先住民やアフリカ系市民への恐れですね。それがあらわになってきている。アメリカは他者から反撃されることへの恐怖を、根強く持っていると思います。9.11でテロ攻撃されると、アフガニスタン攻撃、イラク戦争へと一気に突き進んでしまう。

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