朝から晩までトランプ一色
──ハーバード大学では実際に授業を担当されていたんですね。
はい、同大の教育を内部からこの目で確認するのが主目的でした。
実際現地で生活してみると、テレビは朝から晩までトランプ一色。次々に事件が発生し、問題発言を連発するので話題が尽きない。情報量が半端でなく、もうトランプという言葉が頭にこびりついて、アメリカ全体が強迫観念に取りつかれているような、日常感覚が集団的に狂っていく雰囲気でした。
帰国前に、歴史学者のジョン・W・ダワーさんと食事したときのこと。彼は私を見るなり、「コングラチュレーション(おめでとう)!」と声をかけてきた。「今アメリカはトランプのせいで悪い面が露出している。そんな時期にアメリカに居合わせたのは、研究者としてすごくラッキーじゃないか」と。
──一握りの富裕層と大多数の貧困層を、ますます乖離させるシステムに変容していったのは1980年代レーガン大統領の頃から、と書かれてますね。トランプ時代はその延長線上に出現した?
そうです。トランプはアメリカの分裂をほじくり返し、あおっていますが、分裂自体は1990年代から広がっていた。加えて、メディアの中心はテレビからインターネットへ移行した。一昨年の大統領選挙では、フェイクニュースの蔓延などネットメディアの持つ問題性が露呈した。
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