アメリカが世界の「リスク」になった根本理由 トランプ大統領はアメリカをどう変えたか

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1970年代以降、アメリカ社会で進行していった変化は社会の分断でした。経済が低迷し、階級的にも人種的にも1つにまとまることが非常に難しくなっていった。すると、不安や恐怖心を背景とした暴力が内側に向かっていく。それで銃乱射が起こる。いざとなったら暴力に委ねるわけで、それは外側に向かえば戦争になるし、内側に向かえば銃乱射にもなる。アメリカのいちばん怖い部分ですね。

アメリカは世界の「リスク」になった

──ラストベルト(さび付いた工業地帯)に象徴される白人労働者層が、「自分はもう中産階級ではない」「誇りが失われる」などと恥辱感、喪失感を深めている?

1990年代以降、産業構造転換の中で、新しい民主的な社会を創る一番の力であったはずの労働者階級の人々が見捨てられていく。すると従来の民主党支持から共和党支持へ転換、共和党というよりもトランプのような人への支持に転換するわけですね。決してトランプの思想、信条に共鳴しているわけではない。でも、民主党はもう自分たちのほうを向いてくれない。絶望による転換だと思います。

──現在のアメリカは、慣れ親しんできたアメリカとは別の何かに確実に変化しつつある、と。

『トランプのアメリカに住む』 (吉見俊哉 著/岩波新書/840円+税/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

トランプのアメリカを見るためには、3つの層で見ていく必要があります。独立戦争や南北戦争を経て形成されたアメリカ社会の特質。男性中心主義や白人至上主義。先住民を虐殺し、ある種の差別主義的ナショナリズムを内包してきた。それからレーガン、ブッシュ父子、トランプと1980年代以降の共和党政権による変容。そしてトランプが大統領選出馬表明してから現在に至るこの3年半。

私たちが思い描いたアメリカはレーガンあたりで変わり始め、ブッシュ(子)とトランプの下で決定的になった。アメリカはもはや世界の“リーダー”より、“リスク”であることが明白。だから、今噴出している問題はトランプが生じさせたのではなく、すべて構造的に起きているんです。それを露出させて政治的な力に変えてしまうのがトランプなんです。

──亀裂を深めたアメリカ社会に対し、何らかの対策は考えて……。

トランプ自身には、何もないですよ。解決したら彼の支持はなくなる。解決なんかしなくていいんです、彼は。トランプに引っかき回されたアメリカが今後どうなっていくのか、多くの人々が心配しているけど、彼が考えているとしてもせいぜい次の大統領選まで。それまで景気を維持して自分が再選されればいい。恐ろしいことです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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