連絡は紙!親が困惑する小学校アナログ事情 上司が知らない、小学生親の「カオスな日々」

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法制度面のサポートも手薄だ。労働基準法の看護休暇も対象は就学前の場合。インフルエンザの蔓延で学級閉鎖が起こり、元気なのに学校に行けず預かってくれる場所がない……ということも起こる。就学前は使えた時短勤務が使えなくなるケースも多い。

女性活躍の歯車をまわすために…

前回記事でも紹介した株式会社スリールが今年実施した調査によれば、「小1の壁」が原因で転職などの働き方を検討したというケースは25%に上る。ある外資系企業に勤めていた女性は、公立学童が18時15分閉所で、定時の18時まで働いてお迎えに行くと間に合わず、民間学童も入所を断られた。「6歳に鍵を持たせて1人で留守番させることは心情的にできなかった」と退職して一時、専業主婦になった。

別の女性は実家のサポートを得ながら会社員として忙しい毎日を送っていたが、1学期が終わる頃に子どもが正しい書き順でひらがなを書けないことなどに青ざめ、パートに切り替えたという。フリーランスや短時間正社員など、幸い働き方は多様になってきてはいるが、小1の壁は女性活躍推進を目指す企業にとって、管理職になってほしい年代の女性がこぼれ落ちていってしまう要因にもなっている。

しかも、残念なことに問題は小1では終わらない。子どもが小学3年生になって働き方を変えた管理職の女性は、「小1の壁って、1回突破したら終わるかと思っていたら、小3とか小4の壁もあって、学童保育が使えなくなるというのと、それくらいで急に勉強が難しくなるんですよね……。課長レベルならどうにかなったかもしれないけど、昇進するにつれ難しくなった」と話す。

学校側があり方を見直していくこと、そして企業側も子育て家庭で起こっていることの状況を理解し、サポート体制をつくっていくこと。エコシステム全体がアップデートされなくては、共働き急増社会、そして女性活躍の歯車は回らない。

送り迎えに父親が来ることも多くなっていた保育園時代と異なり、PTAは会長職を除いて、保護者会などもさらに父親が少なく参入しにくい雰囲気で、母親の負担が重い世界と指摘する声もある。さびついた体制を前に、母親が家庭に縛り付けられてしまう状況がまだまだ残る。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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